投資の積極的な活用を政府が打ち出すようになってきた昨今とは異なり、親世代が自宅を建てた時代は好況だったケースも多く「建てたいところに家を建てる」という考え方が一般的でした。
多少駅から遠かったり、交通の便が悪くても夢の一戸建てとして建てられた経緯から、子供世代には引き継がれず、土地家屋とも価値のつかない物件が空き家への道を辿っていきます。
生活のスタイルが親世代と子世代で異なり、たとえ水準の高い立地の一戸建てでも子供世代が引き継がないといったケースも珍しくありません。
子供が、実家を引き継がないこと明らかになった時点から、なんらかの対策が必要になります。
最近では有名芸能人が経験を語った『実家じまい終わらせました! ――大赤字を出した私が専門家とたどり着いた家とお墓のしまい方 – レタスクラブ』といった本も発売されており、書かれている内容は拝見していませんが、注目度の高さが窺える好例といえます。
確かに団塊世代が後期高齢者となる❝2025年問題❞を境に、日本の相続不動産事情は大きく変貌を遂げていく事でしょう。要するに、現在の30~50歳にとって全く他人事ではないという事になるのです。
そこで今回は、実家を実際にしまうときに考えたほうが良い対策方針についてご紹介いたします。
なお、これ以後取り上げる「一戸建て」とは1世帯向けの住宅についてです。二世帯住宅の場合、設計段階から家族の意見を取り入れた属人的な特徴のある物件になっており、売却するケースや賃貸利用のケースで買い手や借り手が見つからず、更地にして売却といったケースが非常に多くなります。二世帯住宅のしまい方については、信頼できる不動産業者の助力のもとで、適切な答えを模索していくことになりそうです。
相続の事前事後でも役立つ考え方の方針
この記事をご覧の方は、今後控えているリスクを解決する方法をお探しの方のほか、実際にこうした状況と直面されている方もいらっしゃる事でしょう。
実際に課題を抱えている方が、ネット検索したり、Twitter、InstagramなどのSNSをご覧になっていると「ご両親が元気なうちに、事前に準備しておきましょう」といった文脈である事がほとんどです。そんなことわかってる、と言いたくなる気持ちを抑えながら、具体的にどうしたら良いのかわからないといったご相談が少なくありません。
こうした相続に関する不動産情報、とりわけ「家じまい」についての情報の多くが、不動産関連の事業者によるポジショントークになってしまっているケースが多く、明らかに不動産業者による偏った情報もみられます。このようなケースでは、事実と解釈が混同され語られているケースがほとんどなのです。
そのため、的確に実家の問題を捉えるため、考え方の軸をまず作りたいと思います。
といっても非常にシンプルで「今後身内が住むかどうか」この1点の軸を設定してみるだけで良いでしょう。以下、くわしく解説します。
ところで、感情面から言えば冷静に、住む・住まないを判断することはできず、ご両親の言葉を尊重したい気持ちとあなたご自身の考え方の間で葛藤することもあるはずです。
しかし、そんなときこそ数字や図に置き換えて見てみることで事実を把握する事ができ、より冷静な判断ができるようになるかもしれません。
また、判断をいったん保留にしたとしても、実家の売却や賃貸利用について日々の生活でちょっと意識しておくだけで、「この人になら売っても良い」あるいは「貸したい」といった人が見つかるかもしれません。
いったん問題意識を持つことは、今後の決断に大きく影響するため、状況を把握することをやめてはいけないと私たちは考えています。
今後身内が住むかどうか、で方針が定まる。
「今後身内が住むかどうか」を考えた場合、答えは3つで「住む」「住まない」「まだわからない」になる事でしょう。
今後身内が住むケースでは、維持管理を行い、いったん賃貸利用なども視野にできるだけ負担なく実家を維持する方法を検討のがベストです。
ただし、年間で数十万円規模のコストがかかる可能性もあるため、マンションの場合には賃貸、一戸建ての場合には、賃貸や民泊利用を視野に入れて年間コストを是正する方針で望まれると良いでしょう。
続いて、今後身内が住まないケースではすぐに売却を中心とした考え方にシフトするのが得策です。
もちろん、賃貸利用も視野に入りますが、多くの場合賃貸物件としての管理負担が膨大で赤字となる可能性も否定できないため、財産としての価値を見積もって、冷静に判断することでリスクを回避しやすくなります。
まだ状況がわからない・決めかねているという場合には、とりあえず、今後身内が住むケースを想定し、維持管理を行う方針で臨むと良いでしょう。
まだ状況がわからないケースでは、以下の記事もぜひご覧ください。
税金や相続に関する思わぬリスクも
爆増する空き家を放置しておくリスクとして具体的に挙げられるのは、税金や相続に関する思わぬリスクです。
適切な管理が行われない空き家は、近隣住民への迷惑となったり、犯罪・放火のリスクがあるなど放置すればするほど危険が増します。そこで法改正により自治体に「特定空き家」と指定されると、固定資産税の特例が認められなくなるなどのペナルティがあり、固定資産税の支払額が最大で6倍など、大幅に上がる可能性があります。
さらに、空き家や空き家となりそうな実家の売却の決断は、3年以内が良いとされています。なぜなら、所有していた期間に関わらず、売価(譲渡所得)から最高3千万円まで控除できる特例「居住用財産を譲渡した場合の3,000万円の特別控除の特例」が設けられているからです。特例の要件として「住まなくなった日から3年を経過する日の属する年の12月31日までに売る」とされています。
そのほか詳しい特例については、国税庁HPの「No.3302 マイホームを売ったときの特例」をご覧になると良いでしょう。
また、空き家売却については、以下の記事が参考になるかもしれません。
https://www.bestworkers.jp/garbage-room/points-for-successful-selling-of-your-vacant-house/
空き家のリスクについては、以下の記事をご覧ください。
具体的な実家じまいの方法
では実際に、実家をたたむ場合、どのような流れになるのでしょうか。
一般的には、売却や維持などの目的に沿って、実家に残された物品を計画的に整理していくことになります。
まず、売却となった場合には、信頼できる不動産業者と共に、査定や金額などについての調整を行います。賃貸利用の場合も不動産業者との話し合いを重ねて賃貸利用での具体的な流れを把握します。
次に、売却でも維持の場合でも家の片付けが必要です。この家の片付けは、残された物品を把握し、処分するものを決め、実際に計画を立てて片付けをおこなっていきます。
こうした手順については、以下の記事でご紹介しておりますので、是非ご覧ください。
実家の問題に難色を示されたら、自分ができることから率先して行う
たとえば、具体的に実家の今後について両親と会話したいのに、スムーズに成立しないようなケースでは、まずあなたご自身が積極的に動いていくことが重要です。
長くあなたが住んでいない実家は親の家であり、もうあなたが住んでいた頃の家ではなく、他人の家として接するべきかもしれません。
そこで、あなたの部屋や倉庫に、あなたの物品があれば積極的に引き取るなど片付けに臨むと良いかもしれません。
急がずにゆっくりと時間をかけて片付けを始めれば、ご両親の考えが変化するというケースはいくらも拝見してきました。
自分達が普段生活しているスペースが片付いていくのは、やはり気持ちの良いものです。ご家族で協力しながら、少しずつ取り組むことがやはりベストな選択肢であることは言うまでもないことです。
実家じまいと同時に考えたいお墓と仏壇
実家をたたむのと同時に問題となるのは、お墓と仏壇についてです。
とくにお墓は、近年無縁仏が増加していて問題となっています。
ご実家をたたむ場合には、実家の近くに存在するお墓へわざわざ墓参りに行くのは大変だと、放置してしまう方も少なくないようです。
そこで、改装を行うことで無縁仏にせず、永代供養できる仕組みも数々登場しています。
くわしくは以下の記事をご覧ください。
さらに、実家にある大きな仏壇をそのままあなたの現在生活している場所へ移すのも大変です。そこで私たちがオススメしているのが小型化です。現代の住環境に合わせて仏壇を小型化することで、多くのメリットを享受できます。
まとめ
今回は、実家のしまい方、たたみ方についてご紹介しました。
事前にどこから手をつけていいのかわからない問題も、今後の予定と組み合わせて実際の状況を考えてみることで、良い方向性が見つかるかもしれません。お盆やお正月などのタイミングで話し合いに時間をかけられるならベストですが、差し迫った解決が必要な場合には、今回の情報を組み合わせて方向性をよく考えて見てください。もちろん私たちへご相談いただければ、状況に合わせてご提案や情報をお伝えする用意があります。
もっとも重要なのは、ご家族の意思を反映さえて、あなたご自身もなったくして後悔のない整理をすることです。
絶対に不可能ということはありません。どんな状況でも必ず良い選択肢は見つかります。あきらめずにぜひ探して見てください。
今回の記事が実家じまいでお悩みの方への一助となれば幸いです。
最後までお読みくださいまして、ありがとうございました。