遺品整理を行なっていると「もっと早く準備しておけばよかった」というお言葉を耳にすることが少なくありません。
しかし、早く準備しておける方というのが多くないのもまた事実です。
事前に親子で話したい実家の大きな問題は、病気や介護、お金、お家のお片付け、空き家やお墓など多岐に渡ります。
これらの話題をそれとなく話せるタイミングは人それぞれですが、年末年始やお盆など家族が一堂に会するイベントごとでは、普段口にしない話題を話せるきっかけとなる場合が多いことでしょう。
大切な家族との時間をより有意義なものとするため、本当に軽く実家の問題について話題にしてみると、有事に備えられる大きな収穫が得られるかもしれません。
今回は年末年始やお盆などのタイミングでご両親と話しておかれることオススメしたいポイントをまとめてご紹介いたします。
病気や介護について
病気や介護は、生活の質を担保する上で、とても重要です。
長く健康でいてほしいと願う気持ちがある一方で、現実的には医療費の自己負担が増大している昨今では、1年間に100万円近くの医療費が必要なケースも少なくありません。医療費のための貯蓄を行っておられたお客様はずいぶん助かったとおっしゃっていたのが印象的でした。
シニア世代の方になるとずっと前に加入した保険の満期金が支払われることもあることでしょう。それらを丸ごと貯蓄しておけばいざという時の有効な味方になるかもしれません。こうした情報をご両親にお伝えできるかどうかで結果が大きく変わることもあるでしょう。
ただし、「自分はこう思う」という観点で押し付けないことを忘れてはいけません。適切なタイミングで話題を出せれば、家族での病気や介護への向き合い方を考えるきっかけとなるはずです。
具体的なお話のポイントは
- もしも介護が必要となったら在宅で介護するのか、それとも施設なのか
- 親の自宅か、それとも子供自宅か
- 介護費の管理をどうするのか
といった内容がポイントとなることでしょう。
施設に入所したり、安心できる生活を送るためにプロの手を借りることも検討材料のひとつです。
私たちでも生前整理と老人ホームのご紹介を行うケースが増えております。
実家や空き家になるかもしれない家をどうするのか
「介護施設への入所などをきっかけとして、実家をどのようにすべきなのか」といった問題は、非常に頭の痛い問題です。
実際、2018年の空き家数は849万戸で、30年前から2倍以上に増加しており、一軒家の場合には、空き家の火災や犯罪に利用されるといったリスクがあります。
問題を放置すると住宅としての控除がなくなり、固定資産税が6倍となってしまったり、近隣の方からの損害賠償といったことにもなりかねません。
何より、空き家のような人がすまなくなった家、空気の循環が滞っている家は、痛むスピードが桁違いです。そのため早急に手立てを講じる必要があるケースが少なくありません。
空き家の場合には、解体して更地にすることで土地を維持できますが、分譲マンションの場合には固定資産税に加えて、管理費と修繕積立金が必要です。
通常、実家のこうした問題に取り組む場合の解決策は「売却」か「賃貸利用も含めた活用」の2択となり、売却を軸に、お考えになる方が多いように感じます。
一戸建てもマンションもスムーズに売却できれば良いのですが、大都市圏以外ではとても難しい場合も少なくありません。
さらに一戸建てに比べマンションは築年数による資産価値の低下が激しく、売れない状況が長く続き、結果として塩漬けとなる可能性もあります。
早めに動き出すため、重要なのが情報を把握することと、信頼できる不動産業者さんとの出会いです。
くわしくは以下の記事をご覧ください。
実家の片付けを自分でやる場合、半年以上必要なケースも
実家をどうするのかという問題には、実家に残された物品の処遇も含まれます。
実家のお片付けを自分で行う場合には、まとまった時間と人手が必要で、取り組む期間は半年以上必要な場合も少なくありません。
仕事の合間を縫って、家庭ごみの収集日も限られ効率的なお片付けができないことも少なくありません。
計画的に進め、必要であれば片付け業者に依頼するなどして解決していくのも選択肢のひとつです。
もしもにそなえるために、準備しておく
地震や自然災害など、もしもに備えて準備する方は増えているようです。
ご両親やご家族のことも例外ではありません。
たとえばお墓。超高齢社会の到来によってお墓を管理できる人が減り、社会問題化しています。
今後、あなたの家族のお墓は誰が管理するのか決まっているでしょうか。
もしものとき、家族で保有する財産はどのようなものがあるのか把握しているでしょうか。
このように考慮点はとても多いと言わざるを得ません。
しかしながら、実際に考えるべきポイントは人それぞれ千差万別です。焦らずにひとつずつしっかりと固めていくことが大切だと言えるでしょう。
信頼できる情報源と、シミュレーション
加えて深刻なのが親世代と子ども世代で認識が異なっていることと、認識のズレに対しての改善・解決策を子ども世代が適切に持っていないケースが多いことです。
多くは知識や経験不足からくるものかもしれません。核家族化した昨今では無理もないことでしょう。
離れて暮らす子ども世代によってご実家をどのようにすべきなのか、そして具体的にどのような方法が存在するのかといった情報は、法改正に対応しておらず古かったり、とても偏ったものが多く信憑性のないものも少なくありません。
そこで重要なのが、しっかりとした情報を受け取れる士業の方や、日頃から情報をある程度キャッチアップしておくことと言えるでしょう。
そして、自分自身や家族へ置き換えた時に、どのようにすべきなのかをシミュレーションしてみると、先に問題を予見できるかもしれません。
メモ書き程度に書き出してみるだけでも、必ず聞いておかなければいけないポイントが見つかるかもしれません。
「なんとかなる」と場当たり的にはじめて後悔することも
たとえば、今まで一緒に住んでいなかった老親と同居を始めようとすると、うまくいかないことが多かったりします。
都会の狭いマンションに閉じ込められたように感じたりといった精神的な負担を強いることになるかもしれません。
それまで送っていた生活が送れなくなるばかりか、血のつながらない配偶者にとっては大きなストレスになることも考えられます。
事前に予測し、行動しておくことはとても大切だと言えるでしょう。
安心を得るための話し合いで、ケンカにならないために
とはいえ、せっかくの楽しい時間がケンカになってしまっては、楽しい気分も台無しです。
まずはじめに、話し合いを円滑に進めるために必要なポイントを押さえておきましょう。
せっかくの年末年始、将来のことを見据えて話し合いをしてみたら、互いにわだかまりが残ってしまって、話題にすることがさらに難しくなってしまうのはもっとも避けなければなりません。
ケンカを避けるには、自分の価値観を押し付けることなく、時間をかけて氷解するようにお話をしていくことが重要です。
まとめ
年末年始に、家族全員ではなくとも顔を合わせて会話をする時間がある方も多いはずです。
時間的にゆとりのある年末年始やお盆など家族で集まった時に、普段話題にしにくい会話を少しでも行えると、日々の生活の中で考えるきっかけとなるかもしれません。
遺品整理や生前整理を日々お客様のもとで行なっていると、準備の大切さを痛感する出来事に数多く出会います。
ゼロリスクは不可能ですし、何より完璧を求めると疲れてしまいます。
自分たち家族にとってどうしても必要で、押さえておきたいポイントについてかんたんに話を切り出すことから、有事の際の備えは始まるかもしれません。
後悔のないように聞くことは決してタブーではなく、むしろご家族にとって有益です。
この記事が、年末年始をご家族で過ごされる方へ話題への一助となれば幸いです。
最後までお読みくださいましてありがとうございました。