近年クローズアップされることの多い実家の整理。
ご両親の住まいを綺麗にする場合、私たちの業界では「生前整理」という言葉で表現したりします。
しかし、実際にお父様やお母様に「生前整理」などと口にしてしまえば、怒られてしまうこともあるのではないでしょうか。
しかしながら、片付かない実家の整理をスムーズに行いたいとお考えの方も多いのではないでしょうか。
今回は、片付かない実家の整理をスムーズに行うために必要な考え方についてご紹介します。
これまで私たちのブログで実家の整理を円滑に進めるための情報をお伝えして参りました。
- 生前整理や終活が失敗する原因:これを言うから作業が進まないのです。
- 生前整理のやり方は断捨離と捉え、業者に依頼すべき理由
- 喧嘩なく円満な実家の片付けを実現するために必要な3つの考え方
- 進まない実家のお片づけは「防災」を理由にすると上手くいく
これらに共通するポイントは、仮にご両親がご病気になられたり、自力で片付けることができないといった状況になった場合、ご本人にもご家族にも大きな負担としてのしかかってしまうこと。
大きな負担を回避するために、片付いていない実家を整理するという視点は極めて重要なのです。
もったいないという親の意識を理解しよう
ご実家のお片づけのシーンで、とてもよく目にするのが、トイレットペーパーやポケットティッシュ、新聞や広告や、その切れ端といったものです。
少し乱暴な言い方にはなってしまいますが、一種の収集癖のようなものの原因は、ご家族によって様々です。
集めるものや集める理由は千差万別で、複雑な理由で捨てられない、といったケースもあります。
代表的なポイントとしては、以下のようなポイントが挙げられるでしょうか。
- もったいないという気持ち。
- オイルショックや、社会情勢の不安を経験することで、万が一に備えないという気持ち。
- ものがあったことを失念してしまい、再度集めてしまう。
- 不安を解消したい(ものにたくさん囲まれていると安心する)
集められているものは紙だけではなく、割り箸やプラスチックのフォークやスプーン、未使用のレジ袋やビニール袋なども残されているケースが非常に多かったりします。
ではなぜ、このようにものを集めてしまわれるのでしょうか。
親と子では考え方が異なっていることを再認識する
共通するのは「もったいない」という気持ちであることが多いように感じます。
ここで重要になるのは、もったいないというご両親の気持ちを理解することです。
以前「遺品整理の現場で分かった親と子で決定的に異なるモノへの感情」とご紹介したように、持ち家や分譲マンションでは、安全のために手すりや防災のために転倒防止器具を設置するだけでも、ご両親が怒り出してしまうというケースがあります。
理路整然と子供が親に対して「危険だから」とか「ものが溢れているのでイライラする」と片付けを始めてしまうのは、NGと言わざるを得ません。
お気持ちは大変よくわかるのですが、親と子では決定的に見解が異なることを意識する必要があるでしょう。
集めてしまうこと、散らかっていることそのものを否定しないようにしたい。
先述のように紙などで散らかってしまっている場合には散らかっていることを否定しないようにしないことが良いと考えます。
実はご家族からご依頼いただく生前整理の場面では、住まわれているご本人も同席の上で、私たちが仲介役となり、整理を行うこともしばしばです。
こうしたところでは、集められたものをゴミのように扱うことは決していたしません。
なぜなら、ご本人は大量のトイレットペーパーやチラシなどを必要だと感じて集めていらっしゃるからです。
そのため、広告は広告として積まれていたり、トイレットペーパーがどの部屋の押し入れにも存在するようなケースでは「きちんと整理されていらっしゃいますね」とか「トイレットペーパーがどの場所にも置かれていて安心ですね」とお伝えすることで、とても柔軟にお考えいただけることも経験して参りました。
ご両親にとってのコレクションであるという視点
集める行為はいわば、カードやミニカーをコレクションするという行為と同じだと捉え、否定しないことが重要なのです。
例えば、もうすでに家にサランラップやアルミホイルがあるのにも関わらず「必要かもしれない」とか「孫が来た時にレンジで温めて挙げられるように」といった配慮で集められている方もいらっしゃるのです。
なぜそこに用意されているのかという視点を持つことは非常に重要だと言えます。
見える化することが重要な場合もある
先にご紹介した例では、各部屋にトイレットペーパーが配備されている状況でしたので、それ自体を否定することはせず、すべてを一箇所にまとめさせていただくようにお願いしました。
いわば「トイレットペーパーの保管庫」です。
さらに、チラシについては高さが50センチほどある少し頑丈なプラスチックの箱をご用意し、そこにすべて貯めて置かれるようにお勧めしました。
さらに、ラップやアルミホイルについては、すべてをキッチンのレンジの下のスペースに置くことにしました。
そうすると「売り場のようだね」というお母様の一言を伺うことができたのです。
保管庫を作って、見える化する
保管庫を作ることで、どのくらいの量をどれだけご自身が持っているのかをわかっていただくことは、とても重要です。
また、限られたスペースを保管庫とすることによって、ある程度の量をコントロールすることができるようになります。
例えば、高さ50センチのプラスチックの箱にチラシを貯める場合には、それ以上は必要ないことを暗に示していますし、サランラップの場合には20本程度あれば、ぎっちりとレンジ下にまとまっているため、満足感も出てくるように思います。
こうすることで、保管場所を特定でき、どのくらいの量が備蓄されているのか把握することができるようになります。
散らかる原因は、スペースに対して物が多いだけではない。
散らかる原因は様々ですが、スペースに対して物が多いだけが片付かない原因ではありません。
まずは、増やさない方向性を検討するべきなのです。
保管庫もその一環でしたが、もう一つ重要なポイントがあります。
それは、日々の行動が積もり積もって物の多い部屋が誕生してしまったということです。
買ってきたり、集めてくる量が、捨てる量を上回れば、物が多い部屋になってしまうことは確実です。
そのため、一旦整理を始めても、集めてしまったりするケースを、トラブルなく防ぐ必要があるのです。
買い物好きや集める原因となる行動に気づく
お母様やお父様がお買い物好きである場合、家にあることがわかっていてもラップやアルミホイルを買ってきてしまうのは、価格が比較的安価で、利用用途があるため、購入しても困らない場合が多いこと、そして何より「購入した」満足感もあることではないでしょうか。
そしてそこには同時に購入する理由も存在しています。
孫のため、とか妻のため、といったものです。
そのため、集めたものを保管する場所をご提案し、納得していただいた上で、見える化しました。
そして、次に出かける前に目につく場所(例えば、いつも手提げカバンを置いているキッチンの椅子など)の近くに保管場所を作っておくといった方法をとることで、新たに購入することを防ぐきっかけになるかもしれません。
そもそも、買い物に一緒について行ってダメ出しをするという方法もお考えになるかもしれませんが、「それはダメ」とか「あれもダメ」といってしまっては余計なストレスになります。
まずは、自分が持っているものを把握していただいて「もう買わなくてもたくさんある」ということを自発的にご理解いただくことを重視するのが良いでしょう。
勝手に捨ててはいけない
最後に、これらの方法がじれったいと、勝手に捨てるという行動は避けなくてはなりません。
お気持ちは非常によくわかりますし、私もそのような行動をとってしまうかもしれないのですが、勝手に捨ててしまうと、それ自体がストレスになります。
そもそも、ご両親と同居していない場合のご実家というのは、他人の家として捉えるべきなのです。
このようなケースで勝手にものを捨ててしまうと「なんであれがないの!」などとケンカやトラブルになっしまうこともあり得ます。
ご両親からの自発的な協力を得ながら作業を進める
ここまでご紹介したように、ご両親の自発的な協力を得ながら作業を進めることが非常に重要です。
最近は書籍などでも「断捨離」や、一緒に取り組む「終活」というような書籍もあったりします。
ご両親と一緒に取り組むことに配慮して書かれている書籍も多く、一緒にこうした本を読みながら解決に向けて相談するのも一つの方法です。
こうした自発的な協力を得るために、散らかって片付かない原因を暗に見える化するという少々じれったく感じてしまうかもしれませんが、真っ向から否定するのではなく、片付けるための理由づけができるような努力が、最終的に解決に向けての糸口となるケースが多いように感じます。
最後に、認知症を患われている方については、お世話になっているデイサービスや施設などがあれば、介護福祉士さんやお医者様に相談の上で、作業を進められることをお勧めいたします。
また、当社ではご家族のトラブルを避けながら、お部屋のお片づけを行う活動に特化したスタッフが在籍しています。
ご相談やご意見でもお気軽にお伝えください。
最後までお読みくださいまして、ありがとうございました。