結婚や住み替え、実家で暮らしていたご両親が老人ホームなどの施設に入られたなどの理由で、誰も済まなくなった空き家や空き部屋をどうしたらいいのかお悩みの方は少なくありません。
私たちも、いわゆる「家じまい」に取り組んでおられる方と出会う機会が年々増加してまいりました。
野村総合研究所が2022年に予測値として公表したデータによれば、2038年には空き家の総数が2000万戸を超えると予想されており、このシナリオ通りにいけば、全国の約3軒に1軒が空き家という計算になります。
一方で、不動産を再利用したり、投資物件として空き家を買い取りリノベーションする事業者も多数登場してきました。
世の中全体を見れば空き家問題は深刻であるということはわかるものの、ご自身のケースの場合にはどのように対処したら良いのか、お悩みの方も少なくありません。
そこで、今回は空き家を整理し、売却や解体、賃貸利用などに活用するために知っておきたい情報を私たちの目線でまとめました。
空き家の整理とは
もう誰も住んでいない家屋である「空き家」は、社会問題化しています。
総務省統計局「平成30年住宅・土地統計調査」によれば、調査時の空き家は全国に848万9千戸。全住宅に対する空き家の割合は13.6%で、日本にある住宅の7軒に1軒が空き家ということになります。直近20年で倍増していることがわかります。
空き家問題は、都市部でも深刻で「空き家対策特別措置法」が施行されるなど、国も法的に対処する必要がある問題として取り組んでいます。
空き家のリスク
「両親の面影を感じ、なかなか遺品整理ができない」「形見の品がたくさんあるため、そのままにしておきたい」と、空き家となった実家の整理に着手できていない方は意外と多い印象です。
自宅が空き家になるという出来事は、一般的に、一人暮らしの高齢者が入院や施設入所、死亡すると同時に発生し、時間の経過と共にリスクが増大します。
とくに深刻なリスクをはらんでいるのが、郊外の一軒家です。
空き家を放置すると、以下のようにさまざまなリスクが存在します。
- 倒壊、外壁の落下、火災が発生する恐れのあること
- 空き家であることが犯罪に利用される可能性のあること
- ゴミの不法投棄を発生させる原因となること
- 蚊やハエが発生したり、ネズミ、野良猫が空き家に集中すること
- 落書きや、ゴミが散乱するなどして、景観が悪化すること
- 庭木が近隣住宅に侵入したり、落ち葉がいたるところに散らばったりするなど
また、空き家状態が長く続いているのに見回りを行なっていないケースなどでは、火災や犯罪のリスクがあり、損害賠償責任を負うケースも存在するため、十分な注意が必要です。
家族として責任を持って空き家を整理したいとお考えでも、仕事に追われるなどして、現時的に解決に至っていない方もいらっしゃることでしょう。
しかしながら、無理のない範囲で熟考し、早期の段階で方向性だけでも家族で決めておかれることをオススメします。
空き家を継続して維持するのは想像を絶する大変さ
ご自身の空き家の問題を考える際、継続して維持することを考える方もいらっしゃるかと思います。
私たちお客様の中にも、実家の維持を行おうと決意して維持されている方がいらっしゃいます。
しかし、空き家の維持は想像を絶する大変さとなる場合が少なくありません。
たとえば、空き家は1週間も空気の入れ替えをしないでいると、入った瞬間から異臭がするようになります。異臭を防ぐため、2日に1日は実家の窓という窓をすべて開け放って換気を行わなければなりません。
しかし郊外の場合、窓を開け放っている間に短時間でも家を離れてしまうとハクビシンやコウモリ、羽蟻などの害虫が空気とともに家屋に侵入することとなります。
知らない間に、シロアリに侵食され、気づいた時には倒壊の危険が生じるといったことになりかねません。
お客様の中にも、維持しようと思って3年間は我慢したけれど、もうどうにもならないから…と相談をいただくこともございます。
極めて難しいことではありますが、なるべく早期の判断がリスク回避には有効なのです。
空き家を維持するために必要な費用
家屋を維持する場合には、瓦や外壁の交換といった修繕費費用や固定資産税などすべて合わせて年間20〜50万の拠出が必要になります。
仮に年間40万円程度と試算すると、5年間で200万円。無視できない金額であることは間違いありません。
土地付きの一戸建てを相続する場合に必要な経費について「土地つき一戸建てを相続する前に知っておきたいお金のこと」にて試算とともにくわしくご紹介しております。
空き家を片付けるために考えておきたいポイントとは?
空き家を放置することは多くのリスクに見舞われることをお伝えしてきました。
では具体的にどうすれば良いのでしょうか。
空き家をどのようまず考えていただきたいのが「空き家を片付ける目的」です。
空き家を片付ける目的を明確に
空き家が倒壊寸前だったり、猫屋敷と化してしまったなど、すぐに対応が必要なケースを除けば、時間をかけて空き家を整理した後の目的を考えていただくことをオススメします。
空き家を片付けた後の目的は主に、以下のような内容になるのではないでしょうか。
- 空き家を維持する
- 空き家を売却する
- 建物を残して売る
- 解体し、更地にしてしまってから売る
- 空き家を賃貸に出す
- 建て替えて住む
空き家の維持をしない場合には、売却か賃貸か。
これまでご紹介したリスクを考慮して実家の維持を見送った場合に、残された道は売却か賃貸といった選択肢です。これらの内容について以下、くわしくご紹介いたします。
なお、実家についての対策や考えられるリスクなどについて「親の家はどうするべきなのか:相続税以外に注目すべきポイント」をご覧ください。
空き家問題の解決法は、売却となることが多い
空き家問題を真剣に検討すればするほど、売却という選択肢は拭いきれないものになっていきます。
とくに、上述したような理由により、年間で相当額の金額を払って維持するメリットよりも、売却によるメリットの方が大きいと判断されるお客様がいらっしゃるためです。
利益を度外視して、売れる状況で売り抜くという姿勢が求められるとは思いますが、リスクを孕んだ自分での維持よりも負担は軽減されるのかもしれません。
どんなに郊外でも、田舎でも、価格が安ければ買い手が付くことも多いといいます。
また、近年の「古民家」ブームで喫茶店を経営したい、という買い手が付くこともあるようです。
実際に昭和初期の雰囲気や朝の連続テレビ小説の影響なども相まって1970〜80年代の懐かしさ、良さを感じたいというニーズも増加傾向にあるといいます。
それほど、リフォーム済みが売却時に重要視される時代ではなくなってきている側面もあるのかもしれません。
空き家の売却をお考えの方に必ず知っておいていただきたい情報は「空き家売却を考える人は2割弱。売却を成功させるポイント」にてご紹介しております。空き家の売却をお考えの方は是非一度お目通しください。
空き家を賃貸物件とする
売却以外に実家を賃貸物件にされることをご検討の方もいらっしゃることでしょう。
借り手を見つけるための経費などが必要であるものの家賃収入が得られることは大きなメリットです。
しかしながら、法的に持ち主に修繕義務が発生することには注意が必要です。
また、築年数が数十年を超える家の場合には、相場より安い金額で貸し出すことになるため、修繕義務を考慮すると、とても収益が少なくなる可能性を孕んでいます。
空き家の賃貸利用について、くわしい情報をお求めの方は、お近くの信頼できる不動産屋さんに相談されると良いでしょう。
空き家管理代行やマッチングサイトという解も。
不動産屋さんや工務店によっては、さまざまな条件はございますが、これをクリアすることによって月に数千円で空き家の管理代行を行っていただけるサービスもあるようです。こうしたサービスを利用して、維持をしていくということも検討されると良いかもしれません。
しかし維持する場合には、やはり固定資産税などの拠出は必要になるでしょう。
そのほか、空き家バンクなどのように、空き家の有効活用するためのマッチングを行うウェブサイトも増えており、専門家の協力を得ながらこうした新たな手段を活用するのも選択肢のひとつとなることでしょう。
空き家を解体する場合に気をつけたいこと
空き家を維持しない選択肢として「解体する」という手段をお考えの方もいらっしゃることでしょう。
しかしながら、ご実家の解体に必要な金額は最低100万円程度であり、補助金などが受け取れるケースなどでない限り、想像以上の出費となるケースもあります。
そのため、空き家を解体しようと考えている場合も、まず家を建てたまま買い手を探すべきだと言えるでしょう。
土地の買い手を見つける前に解体を進めてしまうと、年明けから固定資産税が高額になってしまう、といったケースがあるからです。
解体する場合には、しっかりとした目的を定め、可能な限り専門家の協力を得ながら計画的に進めることをオススメいたします。
どんな目的でも必要な空き家の「片付け」
売却や賃貸利用あるいは建て替えなど、どの目的でも共通するのが、空き家の中に残された古い家財や物品のお片づけです。
目的によっては、このお片づけを自分で行なったり、不動産屋さんや解体業者に依頼するケースもあるかもしれません。
空き家を自分で整理することはできるのか
あまりお金をかけずに自分でやってしまおうとお考えの方もいらっしゃることでしょう。
物量によりますが、自分でも時間をかけることで整理できます。
自分で片付けられない部分は不用品回収業者などに依頼しながら進めていくのもひとつの方法でしょう。
ただし最低でも2週間、長くて数年という膨大な時間が必要となるだけではなく、体調を崩したりケガのリスクもあるため、無理をしないよう、計画的に進められることをオススメします。
なお、自分で片付けられるかどうかを判断する基準は、水道・電気が問題なく使える小規模の一軒家まで(4部屋未満)と考えておかれると良いでしょう。
物量が多かったり、建物の痛みがひどい場合や、状況が良くない場合には、やはり業者に依頼した方が安心です。
空き家の片付けは「片付けの業者」に頼んだ方が良い理由
物量が多い場合や、部屋数が多い場合などは、業者に片付けを依頼することを検討した方が良いかもしれません。
ここまでご紹介した売却や賃貸利用など、どのようなケースでも必要となってくるのが、お片付け作業です。
空き家の整理に必要な片付け作業は、家族や親族などの協力を得て自分たちで整理を行う方法と、業者に依頼する2択となることでしょう。根気よく続けることで完了させることも可能です。
しかしながら、ご自身で行う場合にはまとまった時間が必要となるだけではなく、ケガなどのリスクに十分注意してください。
作業する空き家とご自身の住んでいる地域が離れている場合や、残されている物量が非常に多い場合、すでに解体や売却を決意されている時には、業者に依頼する方もいらっしゃることでしょう。
解体、遺品整理など、それぞれの作業を複数の別業者に依頼すると高額な料金となってしまうケースがあります。
そのため、信頼できる業者さんにワンストップで依頼し、経費を圧縮させ、費用対効果の高い片付け作業を実現できる場合もあります。
ここでポイントとなるのが、誰に依頼するのか、というポイントです。
片付けは誰に依頼するのかが重要
たとえば、空き家を売却することをお考えの場合、不動産会社に「残置物撤去」を依頼するケースもあることでしょう。
この不動産会社がお片づけの業者を独自に手配するケースはちょっとした注意が必要かもしれません。
確かに1社にワンストップで依頼するとすれば、それぞれの業者を探す手間が省けます。
しかし、あなたと不動産会社の間に中間業者が増えるほど、業者ごとの利益が上乗せされ、必要な金額が膨らんでしまうケースも考えられます。
さらに、最終的には解体・売却をするから、という理由で物を雑に扱われては取り返しがつかないことに発展しないとも限りません。
手軽さと価格はトレードオフの関係になってしまっているケースもあるのです。
そこで、片付けはお片づけを専門とする業者に依頼することをオススメしたいと思います。
独自の販売ルートを持つ遺品整理業者であれば、買取できる品物が比較的多く見つかる場合も少なくありません。さらに木、紙、布、鉄などのリサイクルできる物品は作業費用から値引きでの対応ができるケースもあります。くわしくは作業費用の低価格化を実現した理由をご覧ください。
以上の理由から、売却・解体・リフォームなどお片づけの理由を問わず、片付け専門業者に依頼した方が安心だと言えます。
丁寧な片付け作業を行ったのちに、あなたが支払う金額を圧縮することができる場合も少なくないのです。
空き家を片付けを業者に依頼した場合の費用
業者に空き家整理を依頼した場合の費用については、遺品整理などの費用相場と大きな違いはないと考えていただいて良いでしょう。
空き家整理に必要な費用は、ご遺品の量+スタッフの人件費+搬出経路や処分費用に加えて、オプション作業の費用によって決まります。
具体的な料金相場を表にまとめると、以下のようになります。
間取り | 作業時間(およそ) | 料金相場 |
---|---|---|
1K | 2時間 | 30,000円~70,000円 |
1DK | 3時間 | 50,000円~100,000円 |
1LDK | 6時間 | 70,000円~150,000円 |
2DK | 6時間 | 80,000円~180,000円 |
2LDK | 8時間 | 85,000円~180,000円 |
3DK | 1日 | 100,000円~300,000円 |
3LDK | 2日 | 150,000円~350,000円 |
4部屋以上 | 2日以上 | 180,000円~ |
お片づけの相場について、くわしくは「遺品整理の相場が5分でわかる! 作業の費用を詳しく徹底解説」でご紹介しています。
なお、当社の作業のビフォーアフターなど実例については「参考事例」をご覧ください。私たちの空き家に関しての作業は「空き家の片付け」にてご紹介しております。
上記はあくまでも相場であり目安です。空き家整理の場合、業者によってオプション作業の費用内訳が異なる場合もあるので注意しましょう。
空き家の整理を行う場合には、存在する物品を買取やリサイクルするなどして料金から割引できるサービスを提供している業者も存在します。くわしくは「遺品整理は買取で安く抑える。リサイクルを依頼する場合の3ポイント」にてご紹介しております。
なお、これらはあくまでも空き家のお片付けの費用相場であり、上記金額以外にも目的に応じてリフォームや解体費用が必要となる場合があることに注意してください。
片付け業者を選ぶ場合には、相見積もりをとるなどして、じっくりと業者を比較検討した方が良いでしょう。
空き家の整理に必要な片付け作業とは
空き家の整理に必要なお片付け作業は、遺品整理や生前整理と大きく変わることはありません。
しかしながら、建物に負担がかかっていたり、経年変化による損傷が激しい場合には、慎重な作業が要求されるケースもあります。
こうしたデリケートな物件での作業は、各業者の経験に直結する部分です。
そのため、最低でも3社以上の相見積もりを取得して、業者に質問を行いながら具体的な作業方針を決めていくのが良いでしょう。
空き家片付けの費用を抑えるためにやっておきたいこと
片付け費用は、部屋の中に置かれている物品の総量と比例します。
部屋の中に物が多ければ多いほど費用も高くなる傾向があります。
そのため、業者に処分を依頼する物量が減れば減るほど費用が抑えられることになります。
無理のない範囲で、粗大ゴミや一般ゴミを利用して自分で運ぶなどして物量を減らすことで金額を抑えることができる場合もあります。
次に、不要となった物品の中に、まだ使用できるテレビや冷蔵庫、洗濯機などがある場合には人に譲るなどする方法も考えられます。
手間を惜しまず費用を抑えたいという方は、ぜひ、買取業者やヤフオク、ジモティーなどのインターネットサービスを利用して売却を考えてみましょう。
また、業者によっては、こうした家電・家具などについても買取やリサイクルを行うことで値引きを受けられるケースもあります。
空き家の片付けを業者に依頼した場合の流れ
空き家の片付けを片付け業者に依頼し場合、次のような流れを把握しておくと良いでしょう。
- 問い合わせ
電話対応や制服の有無も大切な見極めポイントです。 - 現地にて見積もり
実際に目視による見積もりが不可欠です。 - 業者の決定
相見積もりなどを行って慎重に決めたいところです。 - 契約し、作業日時を決める
遠方からの依頼や非接触を考慮して、空き家の鍵を送る場合には、ゆうパックなど配達記録の残るものを選択するようにしましょう。 - 作業当日
見つけておいて欲しいもののリストなどを準備しておくと良いでしょう。 - 作業報告
業者によっては作業報告や確認を別日でお客様に確認していただくことも可能です。 - お支払い
基本的にはお支払いは後払いの場合が多いかと思いますが、お金のトラブルを防ぐため、業者に対してよく確認を行っておきましょう。
なお細かい具体的な手順については「実家の片付けの2ヶ月前からやっておくべきこと全手順」も合わせてご覧ください。
補足:空き家が市街化調整区域にあるときは
市街化調整区域とは、市街地開発に制限を設けている地域のことです。(反対に市街化を促している地域を「市街化区域」と言います)
都市計画法によって第七条 都市計画区域について無秩序な市街化を防止し、計画的な市街化を図るため必要があるときは、都市計画に、市街化区域と市街化調整区域との区分(以下「区域区分」という。)を定めることができる。
とされています。
つまり、積極的に住宅地として整備することを自治体が考えていない地域と考えることができます。
そのため、自治体によって異なるものの、通常の住宅地と比較すると、建て方や建ぺい率といった建てられる規模について多くの制限が存在します。
また、建て替えや増改築を行う場合でも、自治体に開発の許可が必要になります。
こうした煩雑な手続きが必要な理由や、そもそも建て替えができないことも考え、不動産会社が積極的に売買の仲介をしてくれないなどといったケースがあります。
この場合、建物をリフォームで再生し、建物をつけて販売するといった解決策があります。
どのような課題でも、解決策がないわけではありません。信頼できる専門家との協力でご自身の課題解決に取り組んでみてください。
私たちにも知見がございますので、市街化調整区域でお悩みの方は、ご相談ください。
空き家の整理後に向けてトータルでの計画が必須です。
ここまで具体的なリスクや必要な費用や相場などについて見てきました。
ご両親の実家であることを考え、なるべくなら維持したいと思っていらっしゃる方が多い中でも、金銭的な負担や今後を踏まえて新たな方向性を考えている方もいらっしゃるかもしれません。
もっとも重要なのは「目的を持った解決策」を探すことです。
どうしたら納得できる結果を得ることができるのかをご自身でよくお考えの上で専門家の協力を得ながら計画的に進めていただきたいと思います。
まとめ
私たち横浜ベスト遺品整理社では、空き家についてのお片づけやその後解体までお困りごとを解決するための知見がございます。
その一部を今回ご紹介いたしました。
ポイントとなるのは、闇雲に片付けを考えるのではなく、お片づけの後の目的を考えることです。
その上で、必要となる業者にアプローチをして、複数の業者を比べてみるのが良いでしょう。
日々の生活に追われながら、空き家についてお悩みの方へこの記事が少しでもお力になれれば幸いです。
最後までお読みくださいまして、ありがとうございました。