今回は、日々の生活に欠かせないサービスの登録に関し、亡くなった後の手続きについてまとめました。
日本で利用者の多い代表的なウェブサービスの死亡後の手続きを一覧にしてご紹介します。
注意が必要なポイント。携帯は落ち着くまで解約しない。
サービスの解約に臨む場合、守るべき3つの重要なポイントがあります。
- 故人のアカウントの把握(把握していなければ解約・退会すべきアカウントを特定できません)
- 故人の電話番号を解約しない
- スマートフォンなど2要素認証に利用しているデバイスを破棄しない
生前に利用アカウントの種類や2要素認証の設定有無などをメモに残しておくと良いでしょう。
なお、当記事に掲載されている情報は2022年9月1日時点のもので、閲覧時期によっては陳腐化している可能性があります。
この記事を参考にされる場合には、現在どのような運用になっているのかを事前によくお調べいただくようにお願いいたします。
2段階認証・2要素認証(多要素認証)
最近は日々巧妙になるハッキングへの防護などのセキュリティ対策によって、ユーザーIDとパスワードで認証を行うだけではなく、本人しか知らない秘密の質問を回答することでログインできる「2段階認証」や手持ちのスマホに送信されるパスコードやワンタイムパスワードで認証する「2要素認証(多要素認証とも)」といった複数の手段で認証するアカウントが増えています。
とくに多要素認証は、パスワードや暗証番号以外にアカウントを作成した本人しか所有し得ないスマホやタブレットのほか、その本人所有の機器に設定された顔や指紋といった個人の特徴から認証を行うため、本人であることの証明をより強固にするための仕組みとして人気です。
しかしながら、本人確認が強固ということは本人以外、すなわち残された家族にとってもアクセスが容易ではないことを意味します。
事実、故人のスマートフォンや電話番号の契約を残したままにしておかないと、削除や確認が難しくなってしまうというケースはとても多いのです。
2段階認証・2要素認証を適用している場合、バックアップコードや信頼できる端末の設定といった緊急時にログインするための別の方法につても調べておくと良いでしょう。
余談ですが、2段階認証と2要素認証はまったく別の認証方式です。2段階認証は「パスワードや秘密の質問を知っているかどうか」を基準に認証を行うため、2要素認証と比べてセキュリティレベルは低くなります。
パスワードの管理方法
ところで、利用するサービスが増加する中において、パスワードの使い回しは乗っ取りなど日頃の利用でも大きなリスクとなります。
1人で平均数十以上ものサービスを利用している方が一般的な現代では、パスワードを自分で覚えるといった運用は現実的ではありません。
そのため「パスワードは専用のアプリで管理する」という流れが一般的となってきています。
くわしくは割愛しますが「1Password」などといったアプリや「キーチェーンアクセス」といった機能を利用してクラウド上に安全にパスワードを保存しておく方法も検討しておきましょう。
一身専属を利用規約に定めているサービスが多い。
多くのウェブで提供されているサービスでは、一身専属を利用規約に定めています。
一身専属とは、被相続人にのみ帰属する権利のこと(民法896条)で、サービスの性格上個人との結びつきが非常に強いため、他社に承継できない権利を指します。法律上では離婚請求権や雇用契約上の権利など、故人本人が有している権利などが例として挙げられます。
ポイントやアカウントは引き継げないケースが大多数
ウェブで提供されるサービスの登録アカウントも、この一身専属としているケースが多く、こうしたアカウントは相続財産になりません。
たとえば、利用者の多い「ヨドバシ・ドット・コム」の会員規約には5. 会員資格は一身専属のものであり、ヨドバシカメラは該当会員の死亡を知り得た時点をもって、前項の会員資格抹消届けがあったものとして取扱います。
と明記されています。
とくに、ポイントなどを故人が保有している場合、原則失効するケースがとても多いので、手続きの前などにしっかりと会員規約を調べておくことをオススメいたします。
本来であれば、登録時に規約を全文読んで把握しておくべき事柄ではあるのですが、把握されていない方も多いように感じます。
各サービスの設定方法
基本的には、事前設定が必要で、自分の信頼できる相手に、自分が事前に公開設定を行った情報をメールなどの手段で引き継ぐことを目的にしています。
ただし、ユーザーに対して権利が一身専属となっているケースでは、いかなる方法も提供されていないケースがあることから、事前にデータを何らかの方法で共有できるようにしておくことでリスクを回避できることでしょう。
Apple
自分の死後に自分のAppleアカウントのデータを、事前に指定した相手「故人アカウント管理連絡先」へ開示できます。
この「故人アカウント管理連絡先」にはApple ID や Apple 製デバイスを持っていない人も指定でき、複数の人を指定できます。
承認された日から3年間の範囲でデータを確認することでき、3年を経過すると故人のアカウントは完全に削除されます。
データは、一般に本人がiCloudに保存したデータで、写真、メッセージ、メモ、ファイル、ダウンロードしたApp、デバイスのバックアップなどのことです。
なお、このサービスは故人アカウント管理連絡先に指定された人が以下の情報を得た上で申請を行い、アップルの審査に通過することではじめて開示されます。
- 故人が故人アカウント管理連絡先を選択した際に生成したアクセスキー
- 故人の死亡証明書
Apple社はプライバシーをとても尊重する企業で例外は認められず、たとえ本人や家族であったとしても厳重なポリシーに従う必要がある点に注意しなくてはなりません。たとえば、故人アカウント管理連絡先のアクセスキーを紛失した場合、配偶者であってもデータは開示してもらえません。
また、セキュリティ上の問題に直結するため、キーチェーンに保管されているパスワードの情報はもちろん、個人がAppleアカウントを利用して購入した映画、音楽、ブックや、App内の課金、支払い情報へのアクセスも行えません。参考:故人アカウント管理連絡先がアクセスできるデータ – Apple サポート (日本)
本人の事前の設定方法は「Apple ID の故人アカウント管理連絡先を追加する方法 – Apple サポート (日本)」にくわしく紹介されています。
遺族側の申請方法については「亡くなったご家族の Apple アカウントへのアクセスを申請する方法 – Apple サポート (日本)」にくわしく書かれています。
LINE
国内で多くの利用者を抱えるLINEですが、先にご紹介した一身専属であり、基本的に持ち主が亡くなった時点でLINEアカウントの権利は消失します。亡くなったご家族のアカウントの削除が必要な場合にはLINEのお問合せフォームから依頼できます。
LINE セーフティセンター「故人のアカウントを閉鎖する」
電話番号を手放しても、LINEアプリがスマートフォンに存在する場合、トークなどをご覧になることはできますが、新たな電話番号で新しいアカウントが作成されると、元々使用していたアカウントが削除されます。
前提として、LINEアカウントは電話番号によって取得するため、電話番号1つに対してLINEアカウント1つというのがルールです。
電話番号の枯渇が叫ばれる現在では電話番号は解約すると、一定期間(3か月から半年と言われています)を経過した後に別の人の電話番号となるため、新たに当該番号を取得した人によってLINEアカウントが作成された時点で故人のLINEアカウントは削除されます。
Googleサービス(Gmail、YouTube)
「アカウント無効化管理ツール」を利用して事前に設定を行うことで、一定時間自分がアカウントを利用していない(ログインしていない)場合に、信頼できる人に自分のアカウントの情報を選んで公開できます。
設定内容は、大きく3つです。
長期間使用されていないと判断するまでの期間(3〜18か月)
通知を公開する相手(10人まで設定可能)の電話番号と公開するデータの範囲
最終的にアカウントを削除するかどうか
自分に何かあった場合、信頼できる人に、以下のようなメールが送信され、事前に指定した範囲のデータをダウンロードできます。
山田さん(john.doe@gmail.com)はご自身がアカウントの使用を停止した場合に自動的に Google からあなたにこのメールが送信されるように設定しました。
次のアカウント データにアクセスする権利が山田さんからあなたに与えられました。
- Blogger
- ドライブ
- メール
- YouTube
山田さんのデータはこちらからダウンロードしてください。
よろしくお願いいたします。
Google アカウント チーム
くわしくは以下のページをご覧ください。
アカウント無効化管理ツールについて – Google アカウント ヘルプ
なお、ツールはGoogleアカウントにログインしているパソコンやスマートフォンからお試しいただく必要があります。
Amazon
アカウントの閉鎖と個人情報の削除をリクエストする – Amazonカスタマーサービス
楽天市場
楽天市場は、会員規約によって譲渡や貸与が一切禁止されています。家族には引き継げません。
また同時に、ポイントなどは失効します。参考:【楽天市場|公式ヘルプ】楽天会員から退会する際の注意点
そのため、死亡後は故人のアカウントは退会手続きを行うことで削除します。
なお、退会手続きには、故人が生前に利用していたユーザーID(あるいはメールアドレス)とパスワードが必要です。
- 楽天銀行「口座名義人が死亡しました。どのような手続が必要ですか? | よくあるご質問|楽天銀行(個人のお客様向け)」
- 楽天モバイル
- 楽天カード「カードの契約者が亡くなった際の手続きについて | 楽天カード:よくあるご質問」
Yahoo!サービス
2022年9月現在、Yahoo!関連サービスで生前に本人が第三者に死亡後のアカウントの処遇を委ねる機能は提供されていません。
そのため、生前に誰かにYahoo!のアカウントデータを引き継ぐといった意思表明を行うのは不可能です。
また、故人のYahoo!のアカウントを家族が削除する場合、基本的には削除に関する方法は有料サービスの停止以外には明記されていません。
(ネット上の情報にはお問い合わせフォームから削除申請を行えるとしているものもありましたが真偽不明です。)
Yahoo! JAPANの有料サービスを利用していて、請求が発生している場合、ご家族など代理の方による手続きが可能です。
利用者本人が登録解除できないときは
ご本人以外による有料サービスの利用停止
Twitter社の場合、亡くなられたユーザーのアカウント削除を依頼できます。あくまでも可能となるのは「アカウントの停止及び削除」です。代理での削除も可能のようです。
くわしくは「亡くなられた利用者のアカウントについてのご連絡」をご覧ください。
削除する場合には故人の情報、リクエストを送信された方の身分証明書のコピー、故人の死亡証明書のコピーなどの詳細を提供していただくための手順を記載したメール
が届きます。
なお、事件や事故等による意図しない誹謗中傷に画像が使われたり、意図しない拡散を防ぐために、以下のようなポリシーが定められています。参考「亡くなられた人や死についての画像/動画に関するTwitterのポリシー」
亡くなった人のアカウントを発見した場合、ユーザーが当該のアカウントに対して追悼アカウントにするように依頼できます。
故人の家族や知人が追悼アカウントにするための方法はFacebookヘルプセンター「亡くなった利用者や、追悼アカウントにする必要があるFacebookのアカウントを報告するにはどうすればよいですか。」と「亡くなった家族のFacebookアカウントについて削除をリクエストするにはどうすればよいですか。」に記載があります。
亡くなった人のアカウントを発見した場合、ユーザーが当該のアカウントに対して追悼アカウントにするように依頼できます。
Instagramヘルプセンター「亡くなった方のInstagramアカウントを報告するにはどうすればよいですか。」
Microsoft アカウント
ユーザーが亡くなった場合に、Outlook.com、OneDrive、その他の Microsoft サービスにアクセスする
docomo
手続きは、引き継ぐ「承継」と、引き継がない「解約」の2種類が定められています。
NTTドコモお客様サポート「ご契約者の死亡による承継または解約」でくわしく解説されています。
引き継ぐ場合には、戸籍謄本(コピー可)と、新たな契約者となる方の本人確認書類(利用者のものも)を持っていくことで承継手続きが行えます。
なお、いずれの場合もdポイントクラブ、dポイントは引き継げず失効することに注意が必要です。
au
以下のページでくわしく解説されています。
解約の場合はauサポート「契約者が逝去したためau携帯電話やタブレットを解約したい| よくあるご質問」
引き継ぐ場合はauサポート「譲渡・承継 | ご契約内容の確認・変更手続きのご案内」にくわしく記載されています。
SoftBank
以下のページでくわしく解説されています。
ソフトバンクサポート「[ソフトバンク携帯電話]契約者、使用者死亡に伴う解約の手続き方法を教えてください。 | よくあるご質問(FAQ)」
承継の場合はソフトバンクサポート「承継を行う際の手続き方法を教えてください。 | よくあるご質問(FAQ)」にくわしく記載されています。
ワイモバイル
基本的に来店での手続きが案内されています。
「契約者が死亡した場合の解約方法を教えてください。|よくあるご質問(FAQ)|Y!mobile – 格安SIM・スマホはワイモバイルで」
楽天モバイル
郵送で、二親等以内の家族あるいは弁護士など代理人による申請手続きが可能です。
ご契約者が逝去した場合の解約について教えてください | お客様サポート | 楽天モバイル
UQモバイル
書面手続きが案内されており、お客様センターへ問い合わせを行うように記載されています。
「契約者が逝去したためUQ mobileの契約を解約したい|よくあるご質問│格安スマホ/格安SIMはUQ mobile(モバイル)【公式】」
メルカリ
生前メルカリを利用しており、メルペイに残高がある場合などは、相続財産の対象となり、手続きが必要です。
くわしくは「アカウント名義人死亡時の返金または払戻し – メルカリ スマホでかんたん フリマアプリ」にて掲載されています。
アカウント自体の削除(退会)方法は「メルカリからの退会手順・退会時の注意点・退会後の再登録 – メルカリ スマホでかんたん フリマアプリ」に書かれています。
Suica,Pasmoなど
会員本人が亡くなった場合、退会と払い戻し手続きが可能です。
死亡した会員の退会(払いもどし)手続きを知りたい。 | モバイルSuica よくあるご質問:JR東日本
会員本人が亡くなった場合の手続きは? | Apple PayのPASMOサポート
まとめ
今回は、所有者が亡くなった時のアカウントについて具体的な解約・退会方法と、生前に対策できる方法についてまとめました。
現在このようなことでお困りの方がいらっしゃいましたら、ぜひ参考にしてくださればと思います。
当社でもデジタル遺品について、お客様へサポートを行っております。
最後までお読みくださいまして、ありがとうございました。