生活保護受給者の遺品整理や生前整理などのお片付けについてご相談をいただくことがございます。結論として、生活保護費を遺品整理に充てることはできず、親族が中心となって行わなくてはなりません。
以下、くわしくご紹介します。
生活保護とは何か
生活保護は、経済的に困窮している人に対して、国が保護を行う制度です。
困窮する度合いに応じて、生活するのに必要な最低限度の費用を世帯単位で支給されます。
実際の世帯収入と厚生労働大臣が定める最低生活費を比較して、収入が最低生活費に満たない場合にに、日常生活に必要な費用(単身世帯で約6〜7万円程度)
生活保護の申請を行うためには、市区町村などの自治体の福祉課や福祉事務所といった窓口で申請を行います。
そのほか、生活保護制度そのものについてくわしくは以下のページをご覧ください。
生活保護受給者が亡くなられた場合
一般的に、亡くなられた場合にはケースワーカーさんや担当の方へ速やかに連絡が必要です。
生活保護受給者の葬儀は、費用の捻出が難しいため「葬祭扶助」として直葬(火葬のみ)を行う最低限の葬儀費用(死亡診断書などの書類作成、火葬、骨壷の料金)が自治体より支給されます。
金額は自治体によって異なるものの、約十数万円(12歳以上は206,000円、12歳以下は164,000円)で、自治体から葬儀社等に直接支払われます。
これら葬祭扶助制度の手続きは、ケースワーカーさんや自治体の担当窓口、民生委員の方へ連絡して手続きすることになります。
一般的には、福祉事務所などへケースワーカーさんなどを通して連絡し、葬祭扶助の申請、自治体指定の葬儀社へ連絡といった流れです。
生活保護受給者の相続と注意点
故人が生活保護を受給していた場合にも相続の手続きは通常通りに行います。
たとえ資産価値の少ないものしかなかったとしても、資産の整理をおこなって相続手続きはおこなっておきましょう。
また「相続人が生活保護を受給している」場合には注意が必要です。
相続したことによってご自身の生活保護受給が打ち切られてしまうケースがあるかもしれません。
さらに、生活保護費は借金の返済には利用できないため、借金がそのままというケースも考えられます。相続した結果、借金を肩代わりするといった不測の事態を避けるために、明確に資産の調査・管理をおこなっておきましょう。
相続の際には、担当者や専門家の力を借りながら、しっかりと手続きを行いましょう。
なお、相続放棄する予定のときは、財産の処分は行わないようにしましょう。勝手に遺品整理を始めると相続を容認することになるからです。反対に緊急の場合には、遺品整理を求められるケースもあります。
生活保護受給者の遺品整理はどうする
一般的に、生活保護費を遺品整理に充てることはできません。
生活保護受給者の遺品整理は親族が中心となって行わなくてはならない場合がほとんどです。
なぜなら、生活保護によるサポートは、受給者が死亡した時点でストップするからです。
ただし、遺品整理ではなく生前整理や生活環境改善のためのお片付けは認められる場合があります。
いずれの場合もケースワーカーさんや担当者に確認の上で、しっかりとした順序を踏んで作業を行わないと取り返しのつかないケースもあるため、注意が必要です。
生活保護者の遺品整理の費用は基本的に自己負担
生活保護受給者が亡くなられ場合の賃貸物件の退去に必要な費用は、自治体から賄われることはありません。生活保護費は利用できず、自己負担になります。
そのため、実費で誰かが負担する必要があります。
連帯保証人が設定されているケースでは、まず連帯保証人が支払い義務を負います。
連帯保証人が支払えない場合には、相続人が支払い義務を負います。
相続人全員が相続放棄するなど、支払い能力がない場合には、最終的に物件の所有者が負担することになります。
まとめると、連帯保証人→法定相続人→物件所有者の順で、支払い義務を負います。
ケースによっては必要性が認められるかもしれない
経済的に困窮していたとしても、客観的に必要性を示せる事実を脚色なく伝え、判断を仰ぐことによって、相談をすることはできるかもしれません。
たとえば、生活必需品の家具などを購入する際には、支給される生活費のやりくりで賄うことが原則です。
しかし、必要な家具を購入するだけの持ち合わせがない場合や健康管理や日常生活に著しい支障をきたす場合など、やむを得ない事情がある場合に限定して、家具什器費の一時扶助として貸付金の利用を検討していただける可能性があります。
さらに、両親を介護するため、両親と同居するようなケースで、両親だけ生活保護を受給できるようなケースも存在するようです。(厚生労働省「生活保護制度に関するQ&A」PDF)
つまり、生活保護の制度の趣旨の中にあって止むを得ない事情がある場合には、相談に乗っていただけるケースもあるということです。
遺品整理の作業を行う家族も生活保護を受けている場合には、相続や遺品整理の必要経費を生活保護で賄うのは難しいものの、相続や遺品整理などの手続きを担当の方と相談できる可能性は残されています。
また、生活環境が悪化しているような場合、いわゆる「生前整理」としてお部屋のお片付けを業者に依頼し、その費用について相談できる可能性もあります。
いずれにしても、税金を利用した作業となるため、業者の選定や決定権は行政側にあることを忘れてはいけません。この立場はご自身で遺品整理の費用を捻出しない限り覆ることはありません。
粗大ゴミ処理手数料の減免措置が行われることも
横浜市では生活保護世帯、福祉医療証の交付を受けているひとり親世帯など対象の12世帯については、年間で4個まで粗大ごみの処理手数料を免除
されます。
参考:横浜市HP「粗大ごみ処理手数料の免除を希望する方」
生前整理など、ご家族でお片付けを行われる場合には費用負担なく大きな家具などを処分できるかもしれません。
生活保護受給者の相続や生前整理・遺品整理は担当者と一緒に。
生活保護受給者のお片付けは、役所担当者と一緒に作業を進めるのが鉄則です。
先にお伝えした通り、行政側にすべての決定権があるため、生活保護受給者が自由に決定できないからです。
ご自身の現状を踏まえ、事実をすべて包み隠さずに共有することで、意外な解決への糸口が掴めるかもしれません。
客観的な費用算出には相見積もりを
生活保護受給者のお片付けを業者に依頼するケースでは、自治体から支援を得るため厳しい審査が行われます。
客観的な資料として、3社以上の相見積もりが必要となることが通例です。
福祉課などの行政の担当者が精査し、業者を選定します。もちろん決定権はご本人ではなく行政側にあるのです。
なお、生活ほど受給者の遺品整理にまとまった金額が支払われたという事実がわかれば、遺族にお金がある証拠となり、生活保護は不要と判断されて返還要求となる可能性もあります。
しっかりと適切なエビデンスを残す上でも相見積もりは忘れないように実施しましょう。
残置物は原則、全撤去
基本的に行政が主導するお片付けのケースでは、残置物(残された物品)はすべて撤去となります。
住居に残されている生活用品は廃棄物として処理され、部屋が明け渡されます。
必要な物品を残し、賃貸に住み続けるといった作業は認められないと考えた方が良いでしょう。
不動産所有者視点での生活保護受給者の遺品整理への対応
生活保護担当者の協力で、賃貸物件利用時の連帯保証人への連絡を取り付けることができるケースもあります。
しかしながら、基本的には残置物撤去や未収の賃料については不動産オーナーが負担するケースも増えています。
最近では、家賃保証に遺品整理などの費用捻出ができるのもの増えていることから、こうした制度を賢く利用していくのもひとつの方法です。
まとめ
生活保護受給者の遺品整理や生前整理について見てきました。
孤独死として発見されたなどの理由で、特殊清掃が必要など、通常よりも費用がかかる場合も少なくありません。
早めの行動が選択肢を増やします。
当社では生活保護を受けていらした方の遺品整理についても知見がございます。ご家族の中には、相続を行うか、相続放棄してしまうか事情があってお困りの方もいらっしゃることでしょう。
私たちは、相続についても提携士業の皆さんと課題解決をおこなっており、数ある選択肢の中から最良の方法をご提案する準備がございます。
お気軽にお申し付けください。