終活・生前整理 掲載 更新

今後経験するかもしれない日常生活への15の支障を知ろう

今後、ご自身やご家族が経験することになるかもしれない日常生活への支障についてまとめました。事前に把握しておくことで小さな変化に気づけるかもしれません。
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私たちには相続や生前整理についてのご相談をいただく機会が増えております。

終活や生前整理に取り組もうとされている方が増加傾向にあることは、ご自身の意思を反映できると言う意味で喜ばしいことではないでしょうか。

一方で、具体的にいつから取り組むべきなのかわからないと言うお声をいただくこともございます。

こうしたご質問に、私たちは、具体的な決まりはないものの、お元気な方の多い60代ぐらいからとお伝えしています。

体力と気力ともに充実している状況で下した決断は、後悔のないものになるはずです。

生前整理などに取り組まれようとされるひとつのポイントとして、ご自身の健康状態が影響することは間違いありません。

人生100年時代という言葉が定着してきているように、今後ますます延伸していくことが予想される日本人の平均寿命。

人生の捉え方が大きく変化する一方で新型コロナウイルスといった今までに経験したことのないでき事の最中でもあります。

こうした中、健康を害するとどのような影響があるのかを事前に知ることはとても重要なことです。

自分自身や、自分の大切な人、家族に来るべき将来の健康状況について、事前に予測し知識を得ておくことは不測の事態に備える上で重要です。

こうした意識は、企業などでも熟考される機会が多いようです。

2021年6月10日に公益財団法人 生命保険文化センターから「ライフマネジメントに関する高齢者の意識調査」が発表されました。

「ライフマネジメントに関する高齢者の意識調査」まとまる プレスリリース|公益財団法人 生命保険文化センター(2021年06月10日)

この調査は長寿社会の進展は、生活者にとってさまざまな影響を与えることから、健康面や経済面、生きがいや家族・社会とのつながり等に関する人生設計がより重要という観点から多様化する長寿社会に対する高齢者の考え方、生活の実態・意向等を把握し、これからの長寿社会のあり方を検討することを目的として行われています。

調査の内容は健康状態、性格や生活行動、就労形態や家計、介護や長寿社会に対する意識などを問う内容で多岐に渡ります。

調査は、全国200地点でコロナ禍の2020年10月8日~11月15日に60歳以上の男女に対して行われ、2,083件の回答を得ているようです。

今回は、これらの回答から日常生活に支障をきたすような場合がどのようなケースなのかを明らかに、来るべき状況にどのように備えるべきなのかを考えるきっかけになればと思い、ご紹介いたします。

「できて当然」ができなくなる。

まず、結論として収集されたデータをご紹介いたします。

質問に「いいえ」と答えた人の一覧

以下の表は15の質問に対して「いいえ」と答えた人の割合を示します。

当たり前のことではありますが、高年齢になればなるほど、日常生活に支障を来すことが多くなるようです。

表において、とくに少ないもの・とくに多いものの背景を変えています(単位は%)

 全体60~64歳65~69歳70~74歳75~79歳80~84歳85~89歳90歳以上
 2,08335340649740724213246
バスや電車を使って一人で外出できますか9.11.73.05.88.116.930.360.9
日用品の買い物ができますか5.20.81.22.63.99.917.454.3
お湯をわかせますか2.10.00.21.41.23.36.830.4
請求書の支払いができますか3.70.80.72.42.96.612.134.8
銀行預金・郵便貯金の出し入れができますか6.01.11.04.44.710.318.256.5
年金などの書類が書けますか6.52.02.25.65.712.817.430.4
新聞を読んでいますか14.120.111.815.79.113.614.417.4
本や雑誌を読んでいますか18.415.311.817.518.225.627.347.8
健康についての記事や番組に興味がありますか10.511.69.410.17.612.413.623.9
友達の家を訪ねることがありますか35.630.630.533.034.640.953.078.3
家族や友達の相談にのることがありますか18.010.212.317.318.724.831.854.3
病人を見舞うことができますか9.74.53.97.29.114.028.856.5
若い人に自分から話しかけることがありますか19.213.316.717.320.624.028.041.3
一人で電話をかけられますか1.60.30.00.60.53.73.828.3
一人で薬を服用できますか1.30.00.20.81.02.12.321.7
左右にスライドしてご覧いただけます。生命保険文化センター「ライフマネジメントに関する高齢者の意識調査」P.4

おおむね、80歳を超えた頃から「いいえ」と答える方が増え、日常生活に支障が発生している可能性のあることがわかります。

できなくなることは、とても辛い。

「そんなのは当たり前のことだろう」と思われる方も多いかと思います。

しかし、過去にできていたことができなくなることほど、辛いことはありません。なぜなら「今までできていた」ことを知っているからです。

電車に間に合わせようとして、全力で走ったら息切れがひどく、散々な思いをしたという経験をされた方も多いのではないでしょうか。かくいう私もそのひとりです。若い頃できていたことが、できなくなっていることに気づくたび、年齢を感じます。

全力で走ることができなくなった、ような身体の衰えを感じる局面が80歳代以降でより顕著になり、日常生活にも支障をきたすことになってしまうようです。

ご家族から生前整理など、部屋を片付けようと考えている方は、このように体力が衰えることは想像以上に気力を奪うきっかけとなることをよく理解しなくてはなりません。

できなくなることがあれば、それを理解し「できること」に目を向ける。

できなくなることが増えると、どうしてもネガティブな心持ちになります。

しかし、そのことを理解してくれる家族がいることは何よりも心強いはずです。

ご高齢の両親を持つ方は、これ以降ご紹介するような内容を心に留め、しっかりと理解した上で接することが互いに気持ちよく生活できることでしょう。

さらに、理解するだけではなく、できなくなったことは補い、できることに目を向けることも重要な視点だと言えるでしょう。

  • バスや電車をつかるのは難しくなったかもしれないが、タクシーを使うことで病院に通えている。
  • しっかりと看護師さんやお医者さん、知人の方とコミュニケーションが取れている。
  • 朝ごはんをしっかりと食べることができている。

少しでもできていることをポジティブに捉えることは、ネガティブな部分を補完して余りある考え方だと言えるでしょう。

確かに知識で理解することと、経験として理解することは違います。

しかしながら「できなくなることが辛い」ということをよく理解した上で、今できていることに目を向けることはとても重要な考え方だと言えるでしょう。

日常生活での15の支障

先にご紹介した調査では「客観的健康状態」という表現を用いて、日常生活に差し支えがないかどうか以下の15項目で回答を求めています。

  • バスや電車を使って一人で外出できますか
  • 日用品の買い物ができますか
  • お湯をわかせますか
  • 請求書の支払いができますか
  • 銀行預金・郵便貯金の出し入れができますか
  • 年金などの書類が書けますか
  • 新聞を読んでいますか
  • 本や雑誌を読んでいますか
  • 健康についての記事や番組に興味がありますか
  • 友達の家を訪ねることがありますか
  • 家族や友達の相談にのることがありますか
  • 病人を見舞うことができますか
  • 若い人に自分から話しかけることがありますか
  • 一人で電話をかけられますか
  • 一人で薬を服用できますか

以下は、特徴的な部分をご紹介いたします。

「外出できない」と答えた人は80代以降顕著に。

バスや電車(タクシーではない)を使って一人で外出できるか、日用品の買い物ができるか、友達の家を訪ねることはあるのか、といった外出に関する質問については75歳以上から徐々に割合が増加します。

今回の調査では「友達の家を訪ねることがありますか」という質問に「いいえ」と答えた人が全体で35.6%と非常に多いことがわかります。

家族以外の友人や知人といった方との関わり合いがないと予測されるのは、85歳上で50%を超えています。

公共交通機関であるバスや電車を使って外出できず、日用品の買い物が難しくなると、自立した生活は困難です。この年齢となると配偶者も一定の年齢であるケースが多く、老老介護などといった問題が深刻な理由を裏付けています。

80歳以降は目的地への移動も難しく、また自立した生活が難しいことは、私たちはしっかりと理解しておくべきだと言えるでしょう。

ライフマネジメントに関する高齢者の意識調査の客観的健康状態のグラフ(編者作成)

男女別で見ると、女性の方が男性よりも「外出できない」と答えた割合が多く、高齢女性の方が外出できないという結果になっています。

ところで、筋肉は、年齢を重ねていても発達させることのできる数少ない部分のひとつと言われ注目されているようです。身体を動かすことは重要なことだと言えるのかもしれません。

少しでも活動的になることはとても重要だと言えるでしょう。

交通事故などのリスクとトレードオフの関係性にはなるものの、60歳代のうちから健脚を求めて無理のない範囲で散歩などを習慣づけておくことはとても重要なのかもしれません。

最低限の日常生活を送るために

お湯をわかしたり、電話をかけたり、薬を服用するなどの毎日行う動作や、必要なお金を引き出すことが「できない」と回答した人の割合は90歳以上で大きくなっています。

やはり、80歳代からは家族やそのほか身の回りの方が介助をする必要のあることがわかります。

ライフマネジメントに関する高齢者の意識調査の客観的健康状態のグラフ(編者作成)

 

そのほか興味深いデータとしては60〜64歳で「新聞を読まない」と回答している人が他の年齢に比べて高くなっています。

スマホ利用率が非常に高くなってきていることから、インターネットを利用した情報獲得を行なっている割合が増加しているのかもしれません。

まとめ

今回は、日常生活への15の支障を、生命保険文化センター「ライフマネジメントに関する高齢者の意識調査」の中からご紹介いたしました。

今後、あなたやあなたのご家族が経験する衰え、健康上の問題が日常生活に与える影響を予測する一助となれば幸いです。

これらを予測できたら、次に自分がどのようにすべきなのか、そしてどのように準備したら良いのかを考えることができるかもしれません。

生前整理の現場で積極的に終活に取り組んでいらっしゃる方を目の当たりにすると、ネガティブとは真逆に、明るく真剣に取り組んでいらっしゃるシニアの方がとても多いことに驚きます。

「自分の一生は自分で決めるんだ」という矜持さえも感じ取れることさえあります。

ネガティブな内容だけではなくポジティブにできることに目を向けながら、しっかりと理解していくことが重要です。

理想論のように感じる方もいらっしゃるかもしれませんが、誰もが老いていきます。

それを受け入れる、あるいは受け入れようとしている方にとってご家族などかけがえのない方の理解はきっと心強いはずです。

それは、長年のわだかまりを氷解させるきっかけにもなるかもしれないのです。

この記事が終活や生前整理に取り組まれている方への一助となれば幸いです。

最後までお読みくださいましてありがとうございました。

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