終活・生前整理 掲載

終活における財産目録作成のメリット4点と具体的な書き方

あなた自身の財産を見える化する「財産のリスト」を作成しておくことは、大切な資産をもれなく受け継がせることができるだけではなく、今後の財産状況を把握する上でとても役立ちます。
財産目録の表紙
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以前、私たちのお客さまの中で「終活や生前整理で成功した人が最初に必ずやっている」こととして「クレジットカードの解約」が挙げられることをご紹介しました。

お金に関することは最大の関心事です。

それだけに、トラブルの原因となる可能性も大いにあります。

そこで、今回は、相続や遺言といった視点だけではなく、老後の資産把握にも大変役立つ財産目録についてご紹介いたします。

司法書士さんなどの士業の方にご依頼いただかなくとも、ご自身の考えで進める内容をまとめました。

財産目録とは?

財産目録は、所有している財産を一覧としてまとめた相続財産のリストです。

相続財産のリストには、預貯金や負債など正負それぞれの財産をもれなく記入します。

財産目録は単に相続財産だけに限りません。一般的な会社決算や、破産手続きなど法律的に財産を取り扱う局面で登場する言葉です。

今回は、相続財産の財産目録について解説します。

生前につくる相続における財産目録は事前に作っておいて、あとで加筆修正、削除をおこなってメンテナンスするようなイメージを持っていただけると良いかもしれません。

相続で財産目録が必要とされるシーン

相続で財産目録が必要とされるシーンは、主に以下のような状況にある場合です。

  • ご自身が生前にご自身の財産目録を、遺言書作成のために作成する。
  • 相続人が、亡くなった人の財産の目録を作成する。
  • 法律上の遺言執行者が遺言執行前に、遺産の目録を財産目録として作成する。

相続人たちが財産目録を作成する必要があるのは主に、相続税の申告や遺産分割協議の場合に財産が把握できていないと問題だからです。

しかしながら、被相続人が亡くなった後の遺産調査は容易でなく、資産の多寡にかかわらず、プロでも数か月の期間を要する場合もあるため注意が必要です。

そのため、生前にご自身できちんとした財産目録を作成しておくのは、ご遺族の負担軽減としてとても良いことでしょう。

今回は、相続財産の財産目録について、生前に自分の財産目録を自分自身で作成する場合について取り上げます。

終活における財産目録を作成するメリット

相続における生前の財産目録作成は義務ではありません。しかし、遺言書と併せて残しておくことで多くのメリットを享受できます。

とくに「死亡届提出後に必要な手続き一覧」はゆうに40を超え、非常に煩雑です。

財産目録の作成は、いわゆる「死後事務」を大幅に省力化できる可能性があります。

以下、想定される代表的なメリットをご紹介します。

財産の全体像を見える化する

もっとも大切な役割が資産の見える化です。

資産をリストにすることによって可視化し、遺産相続に役立てます。

不動産や預金などプラスの財産に目が行きがちな相続ですが、借金や負債などのマイナスの財産もしっかりと把握して、継承しなくてはなりません。

正負をしっかりと把握することで、はじめて相続を考えるスタートラインに立てるといえるでしょう。

プラスの財産マイナスの財産
不動産・土地・金融資産(預貯金・有価証券・投資信託)自動車・骨董美術宝石・生命保険(みなし財産)・還付金・会員権等借入金(借金・住宅ローン・自動車ローン・医療費の未払い)・家賃・未払いの税金・補償責務(連帯保証人の地位)

自身の今後を考えて、遺言の内容を正確に検討できる

財産をすべて掌握することによって、遺言の内容を正確に検討できるようになります。

誰にどの程度の財産を受け継いで欲しいのか、などを検討できます。

さらに生前に未払いの医療費や税金等が見える化できるため、今後のお金の流れを簡単に把握できます。

具体的にどのくらいの費用が必要で、どれだけの費用が残るのか、キャッシュフローを簡単に把握できれば、その後の遺言書の内容も現実に即した効果の高いものになることでしょう。

また、相続税の申告が必要かどうかをすぐに判断でき、税理士さんへの相談など具体的な方法を検討しやすくなります。

相続手続きの助けになり、公平な遺産分割協議を促す

資産を見える化するメリットは、相続手続きをスムーズにします。

生前に作成された財産分割が存在していれば、相続人だけではなく、被相続人であるあなたご自身で、相続手続きの計画に着手できます。

調査が必要となる部分の大幅な省力化が可能となり、事前に必要な手続きの全体像が把握できるため、用紙取得の二度手間がなくなるなど、大幅な効率化が望めます。

さらに、公平な遺産分割協議を助けます。

たとえば、誰か相続人の一人が作成した資料や財産を口頭で議論する場合には、根拠が不明確と疑われたり、本当にすべての財産について話題となっているのか疑問を持たれて争いとなってしまうこともあると聞きます。

こうしたとき、生前に被相続人によって作成されたかどうかにかかわらず、財産目録が存在していることで、遺産分割協議をすべての財産にわたって正確に把握しながら進められます。

なお、あなたが今後遺言を作成する場合には遺言執行者を定め、その遺言執行者が財産目録を作成する義務を負い、遺言執行者へ相続人が開示を求められます。

遺族・相続人にとっては、相続放棄するべき目安を事前に把握できる

相続人にとっての財産の全体像を見える化するメリットは、マイナスの財産が多い場合に、相続放棄を行える判断材料を明確に示せることです。

相続放棄の申し出は家庭裁判所に対して相続の発生を知った日から3か月以内に行います。

この3か月の期間内にすべての相続財産を把握するのは、容易ではありません。

さらに、財産内容を確認せずに安易に相続をし、後から返済困難な大きな負債が判明した場合に負債を背負うことになるため、事前の把握はとても大切なのです。

なお、3か月以内に財産目録が完成しない場合には、専門家の協力のもとで、相続放棄の期限を延長するように申し立てることもできます。

終活での財産目録作成におけるポイントとは

それでは具体的に財産目録を作成するときに注意しておいた方が良いポイントはどのようなものでしょうか?

まとめると以下のようになります。

  • わからないものでも思いついたものは、もれなく記入する
    「〇〇銀行→預金額、通帳不明:調査中」などのように。
  • わかるものは、誤記のないように、正確に財産が特定できるような手がかりも記載する
    たとえば、不動産についての地番や家屋番号、住居表示、金融機関と支店名など
  • 通帳の写しやなどを添付するなど、財産の有効な証拠を添付しておく
    通帳の写し、不動産評価額などがわかる書類など
  • 財産に関する状態(定期預金の利息分・不動産に関する共有持分など)も正確に記入する
    契約の詳細やあとで調べてわかることも記載しておくと親切です。
  • 不動産以外の高額な動産についても記載しておく
  • 借金やローンなどの負債も相続財産であり、しっかりと記入する
  • 遺言作成時のために便宜上、通し番号を記載しておく
    財産目録記載の財産1-1などのように表現できる
  • 遺言書と同じく契印(2枚以上の書類が連続していることを証明するために、またがって押された印のこと)を押す

以上をしっかりと記載しておきましょう。

不明点があったり、ご自身での調査が難しいときには弁護士さんや司法書士さんといったプロの方に相談すると良いでしょう。

民法の改正による自筆証書遺言の取り扱いの変化と財産目録の関係

ところで、「法務省:自筆証書遺言に関するルールが変わります。」によれば、平成31年1月13日に施行された民法の一部改正により、自筆証書遺言の方式が緩和されました。

くわしくは法務省の上記該当ページをご覧ください。内容をまとめると、以下のようになります。

  1. 法務局で自筆証書遺言の保管が可能に
    2020年7月1日から法務局で保管の事前受付が可能に。自宅に保管した際の紛失や偽造のリスクを避けられる。手数料は3,900円。
  2. 法務局保管の遺言書は検認不要
    従来の家庭裁判所への検認の申し立てが法務局保管の遺言書に対しては不要に。
  3. 財産目録は自筆(直筆)でなくともOKに
    代理作成やパソコンによる作成でもよくなった。ただし、本文が書かれた自筆証書遺言に添付される場合の用紙としての財産目録のみ。

以上から、本文内に記載しない財産目録であれば、自筆ではなくパソコンや財産目録でも認められることになりました。以下のように言及されています。

Q5 財産目録の添付の方法について決まりはありますか?
 

(中略)なお,今回の改正は,自筆証書に財産目録を「添付」する場合に関するものですので,自書によらない財産目録は本文が記載された自筆証書とは別の用紙で作成される必要があり,本文と同一の用紙に自書によらない記載をすることはできませんので注意してください。

法務省「自筆証書遺言に関するルールが変わります。」Q5 財産目録の添付の方法について決まりはありますか?

まとめると、法務局で保管をしてもらえて、検認不要になり、別紙であれば財産目録はパソコンで作成可能となり、遺言本文は自筆で作成できるとなれば、従来の状況と比較して遺言書が身近に感じられるかもしれません。

https://www.bestworkers.jp/syuukatu/getting-ready-for-estate-handling-before-you-die/

相続における財産目録の書き方

財産目録には最低限、以下の項目を記入します。

  • 財産の種類や名称
  • 住所や保管場所の所在地や金融機関
  • 金額(あるいは金銭的価値)と数量

上記でお伝えしました通り、財産目録単体では、パソコンでの作成が認められているため、(ExcelやOpenOfficeなどの表計算ソフト)を利用するなどして作成した方が手っ取り早いかもしれません。

相続における財産目録の記入例

財産目録には、決まった書き方やフォーマットはありません。

(なお、以下の記入例は相続における財産目録の記入例であり、それ以外の用途については別に定められた形式が存在することもありますので、ご注意ください)

あくまでも目安であり、ご自身で書く場合に迷われましたら、専門家などにご相談いただいても良いかもしれません。

以下の財産目録はご自身の状況によってアレンジして変更されると良いかもしれません。

自由に項目を追加して、より親切な財産目録を作成してみてください。

財産目録記載例(不動産)

不動産の場合には、借地権も土地や不動産に含まれるため、忘れないように記載しておきましょう。

種類所在地(地番)面積評価額(金額)
宅地神奈川県横浜市中区〇〇番地100㎡10,000,000
住宅(居宅)神奈川県横浜市中区〇〇番地2階建5,000,000

財産目録記載例(不動産についてしっかり書いたもの)

地番地目地積(㎡)現況・使用状況等資料番号
神奈川県横浜市中区〇〇〇〇番〇 100100㎡
住宅の所在家屋番号種類構造床面積(㎡)現況・使用状況等価格資料番号
神奈川県横浜市中区〇〇〇〇番〇居宅 木造瓦葺2階建2階1階○○.○○
2階○○.○○
持分2分の15,000,0001-1

添付資料には、不動産登記簿謄本(登記事項証明書)を利用すると良いでしょう。

財産目録記載例(預貯金)

金融機関の名称種別口座番号金額(円)管理者備考
○○銀行▲▲支店普通12345675,500,000  

預貯金を記載するときには、記載内容と現実にズレが生じないように注意しましょう。

さらに10年以上入出金がない口座は休眠預金として指定され、預金保険機構に移管された上で、民間の公益活動に利用されるため、注意が必要です。

さらに現状で残高がわからない場合には履歴や残高証明書を取得して添付しておくと良いでしょう。

財産目録の記載例(株式・投資信託)

証券会社と株式の銘柄等種別数量(口数、株式等)記入時の評価額備考
●●証券投資信託1000株1,000,000●●証券担当者▲
○○証券「XX株式会社」株式100株1,000,000 

財産目録の記載例(保険)

保険会社の名称種類保険証券番号支払予定額証書等の保管者備考
●●生命保険生命保険00000000005,000,000  

財産目録の記載例(その他の価値がある動産品など)

種類保管場所金額(評価額)
○×画伯の絵画貸金庫200,000
ダイアモンドの指輪寝室300,000

価値を判断するときには個人的な見解ではなく、目利きのできる専門家に評価額の算定をお願いしましょう。事前にしっかりと価値が把握できていない場合には、相続後に、相続人に対して追徴課税が行われる可能性もあります。

財産目録記載例(負債)

債権者名(支払先・返済先)種別残額借入金額等返済予定等備考資料番号
株式会社▲▲▲借入350,000500,000毎月5万円  

添付資料には借金の残高や返済期間等がわかる資料のコピーを利用すると良いでしょう。

債務やローンがある場合には、以下のような信用情報センターに開示情報を申請することで確認できるケースがあります。

不明なことがある場合には、信頼できる専門家に依頼するのが良いでしょう。

今後1年間に必要な支出の一覧

種類支払先金額備考(支払の方法)
入院・入所費   
医療費   
健康保険料   
介護保険料   
住民税   
固定資産税   
家賃・地代   
生活費   

まとめ:財産目録は「見える化」できるからこそ、取り組みたい

今回は財産目録の書き方についてご紹介いたしました。

財産目録を作成することは財産の「見える化」を促進します。

今後必要な費用の見積もりと、財源が特定できるため、相続以外にもメリットが大きいのは財産目録の作成作業です。

ご自身の資産の棚卸として、取り組んでおくと思わぬ発見や収穫があるかもしれません。

相続においては、相続人が、被相続人の正負合わせた財産を取得することになるため、財産目録には正しく、根拠のある内容を記載しなくてはなりません。

ご家族に、ローンの返済を強いたり、借金の肩代わりをさせることのないように、正確な記入を心がけると良いでしょう。

最後に、私たちにご依頼いただくお客様には、財産目録の調査方法や作成方法は、弁護士、司法書士、行政書士、税理士等の専門家をご紹介しております。

この記事が、真摯に終活に取り組まれているあなたへの一助となれば幸いです。

最後までお読みくださいまして、ありがとうございました。

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