「生前整理は早いほうが良い」
「生前整理に時間がかかった人の例」
「生前整理は業者に依頼しよう」
こうした文脈の記事を数多く見かけるようになってきました。最近ではSNSで自身の終活の取り組みを公開される方もいらっしゃるようで時代の変化を感じます。
テレビやインターネットで語られる生前整理みたいに仰々しくなくても良いけれど、生前整理ってやった方がいいんだろうなあ、とお考えの方やご家族の方に、オススメの時期や取り組み方についてご紹介いたします。
自分の死後に希望を叶えられる生前整理は、60代から徐々に始めるのがオススメ。
結論として、健康寿命(男性71.19歳、女性74.21歳)※1を基準として60代から家族の協力などを得て着手して見ることが重要なのではないかと私たちは考えます。
具体的にどのようなことに取り組んだら良いのかについては『賢く終活している人がやっている「やることリスト10項目」』にまとめておりますので、ぜひご覧ください。
そのほか、以下のような記事も参考になるかもしれません。私たちが生前整理の現場に取り組むことで得られた知見をご紹介しております。
※1:健康寿命(平成22年)厚生労働科学研究費補助金「健康寿命における将来予測と生活習慣病対策の費用対効果に関する研究」より
生前整理とは
生前整理とは、自分自身が亡くなった後にご遺族となるご家族やご親族に対して、相続や遺産に関わるトラブルや負担をかけることがないよう、あらかじめ自分自身で整理しておくことです。
生前整理の主語は、自分の死に向き合っているご本人ということになります。
対して、遺品整理の主語は、残されたご家族やご兄弟となります。
生前整理のメリットとは
遺品整理と比較して、生前整理を行うことメリットはとても大きいといえるのかもしれません。
- 部屋を片付けることができ、清潔な生活空間を作ることができる。
- 転倒などによる事故を防ぎ、より安全に暮らすことができるようになる。
- 片付いたスペースを有効活用できる。
- 財産の状況を把握できる(家族が保管場所を把握できる)
- 不足の事態に備えて書類の保管場所などを確認しておくことができる。
身の回りを整理して清潔で安全な空間を作り出すことだけが生前整理のメリットではありません。
実は「安全に暮らせる」というメリットも存在するのです。
たとえば、阪神大震災で自身当日1位時間以内に亡くなった方のうち90%が圧死や窒息死だったとされています。
また、消費者庁のニュースリリース「御注意ください!日常生活での高齢者の転倒・転落!」によれば、高齢者の介護が必要となった原因の12.5%が骨折や転倒によるものだとされています。
このように、生前整理はご自身の希望を先々に叶えるだけではなく、明日からの生活を暮らしやすくする工夫も可能となるのです。
生前整理は60歳を目安に焦らずゆっくりと
それでは、生前整理のメリットを享受するために、生前整理を何歳までにどのように始めるべきなのでしょうか。
理想論ですが60歳を目安に焦らずゆっくりと進めていくのが良いのかもしれません。(あくまでも目安であり、終活自体は何歳からはじめても良いでしょう)
生前整理を60歳からとした理由は健康寿命と定年退職をきっかけと捉えることができるからです。
生前整理には時間が必要です。
ゆっくりと、しかし確実に生前整理を行うために具体的な方法論も重要ではありますが、まずは取り組み始めてみていただきたいと思います。
健康寿命と生前整理
日本の平均寿命は戦後70年で30歳以上も伸びてきました。
1947年には50歳代だった平均寿命は2019年には男性81.41歳、女性87.45歳※2となっているのです。
これに対して先にご紹介した健康寿命は男性71.19歳、女性74.21歳※1と、男性では10年ほどの開きがあるのです。
入院や、老人ホームへの入所などを考え、60歳代から徐々に取り組まれようとされる方に出会うことも増えてきました。
ご自身が入所されたり、入院されている状況では満足に家の状況を見られないからという理由でした。
実際に行動するのは困難な場合もあるかもしれませんが、少しずつでも手をつけてみることをオススメしたいと思います。
※2:厚生労働省「生命表」2020年7月発表
定年後や還暦と生前整理
もうひとつのきっかけは定年退職や還暦という60歳の節目でしょう。
会社勤めの方なら会社生活から開放され、新たな生活がスタートします。
また人によっては「老い」という言葉と向き合い始める時期でもあるかもしれません。
身の回りの物を減らして新たな生活へ向かうために、生前整理はとても良いきっかけとなることでしょう。
とくに、今まで取り組んできた役割を失うと考える男性の方にとっては、老後にルーチンワークが必要となることもあるかもしれません。
定年後の家族トラブルを回避する役割を担うこともできる可能性
定年後に、家族やご近所とトラブルとなってしまうといったケースは残念ながら増えているようです。
たとえば、以下のようなポイントで家族とのトラブルとなってしまうケースがあるそう。
- 成人した子供についてあれこれとついつい口を出してしまう
- 体育会系出身・営業マン一筋だったので、毎日張り合いがない
- 地域の活動やPTAなどにほとんど参加してこなかった
- 無趣味で仕事だけをずっと定年まで実直にこなしてきた
今まで肩書きやタテの関係に慣れすぎている場合には、定年後途端に親子喧嘩が始まってしまったりとトラブルになってしまうケースが少なくないようです。
こうしたトラブルを回避するために生前整理が有効な手段となる可能性もあります。
定年後の生前整理でヨコの関係を築いてより良い生活を
先述のトラブルを避けるために自分のテリトリーである自室や書斎などから生前整理を始めてみると、思わぬ気づきを得られるかもしれません。
たとえば、自室の整理をしたのちにゴミ出しをしていたら、小さかった息子さんが立派に成人していて車を運転している姿を目にしたり、ゴミ出しをしている近所の方と挨拶をする機会も増えることでしょう。
さらに、自室を整理する際の用具を部屋の中から見つけ出すなど、ご家族との会話の機会も増えるように感じます。
このようにご家族だけではなく、地域やご近所とのヨコの繋がりを築いていくために、生前整理からの新生活は良いきっかけとなるかもしれません。
もしも、あなたがご両親などに生前整理についての話題を切り出しにくいとお感じになっているのなら「喧嘩なく円満な実家の片付けを実現するために必要な3つの考え方」をご覧いただくと、お役に立てるかもしれません。
もちろん、60歳以前にはじめても大丈夫。
もう少し早めの生前整理のきっかけとしては、子育ての区切りがあることでしょう。
子育てが一段落したあとは、自分の時間が取りやすくなります。
また、定年後の生き方にも思いを巡らす時期でもあります。多くは50代がその時期になるかもしれません。
生前整理に取り組まれた方のご意見で印象的だったのは、
「自分ではまだまだと思っていても「老い」は確実に、平等に近づいてきていると実感した」
「自分の老いを自覚し始める前に生前整理を始めるのがベストだと判断した」
というご意見です。
自分自身で今後に取り組まれている方は、生き生きとされまた、片付いたご自宅での新生活へ向けてハツラツとされていたのがとても印象的でした。
部屋の中に多くの物があると、それだけで知らず知らずのうちにストレスが溜まってしまいます。
物が少ないシンプルな生活は、今後の生き方に新たな視点をもたらしてくれることにもなるのです。
筆者もこの仕事を始めてから、もしもの時に備えて重要な情報をまとめたりしています。
生前整理に取り組むために見落としがちなポイント
先にご紹介した平均寿命や健康寿命は平均値であり、もちろんすべての方に当てはまるわけではありません。
終活や生前整理に取り組まれる方がもっとも多く口にされるのが、体が衰える前に「気力」が衰えてくるのが一番の問題であるということです。
たとえば、次の項目に心当たりがあれば、少し自覚が必要になるのかもしれません。
- 掃除や洗濯の回数が減っている。
- 部屋が多少散らかっていても平気になってきた。
- 外出の回数が減ってきた。
- 読もうと思っている本が途中のままになっている。
- 食事が簡素になってきた。
気力が衰えてくると色々なことが億劫になってしまいます。
そしてこれは、残念ながら誰しも経験することなのです。
気力を削がれると遅々として進まず、せっかくの希望を叶えることができない。
体力や気力が以前よりもなくなったような気がする、そう感じてからお片付け作業をご自身で進めるのは非常に難しいのかもしれません。
早めに生前整理を始めるメリットは、ここにもあるのです。
もしご両親に気力の衰えを感じるような傾向があれば、何らかの理由をつけてでも早めに取り掛かるのが賢明なのかもしれません。
気力があって、記憶もハッキリしているうちに、生前整理に取り掛かるのが良いでしょう。
それだけではなく、生前整理を進めていくと、不要なものを次々と処分していくことになります。
当然、処分したものがあったところには、新たなスペースができることになります。
私たちの経験では、丸々ひと部屋分空いてしまうこともありますし、場合によってはたったひとつの部屋ですべてが収まってしまうということもありました。
家の中がスッキリし、広くなると、自然と気持ちにゆとりが生まれてきます。
新たな空間でやりたかったことができるかもしれません。
生前整理は家族のためだけではなく、ご自身のためでもあるという理由はここにもあるのです。
新生活に際して、新たに自分を見つめ、自分の新しいライフスタイルを身につける機会にもなるのが生前整理の隠れた大きなメリットなのです。
まとめ
今回は、生前整理をいつから始めるべきなのかについて、60歳をひとつの基準にしてゆっくりと始めて行くのが良いということをお伝えしました。
生前整理の魅力は、当事者が希望を叶えるためにあらゆる準備を行えることにあります。
生前整理は、自分の意思で今後を決定しているという充足感が得られるだけではなく、ご家族やご近所との関係性を新たに構築したり、新生活へ向き合うきっかけになる可能性を秘めています。
これらの生前整理は業者に依頼せずとも、ご自身で少しずつ始めることが可能です。
生前整理に興味をお持ちの方にとって、この記事が少しでもお役に立てれば幸いです。
最後までお読みくださいまして、ありがとうございました。