少子高齢化と核家族化が進んだ現代日本では、一人暮らしの世帯は少なくありません。
内閣府『令和3年版高齢社会白書』によれば、65歳以上の一人暮らしの人は、2015年時点で男性約192万人、女性約400万人。2035年には840万人と推計されています。
こうした状況では、一人暮らしの今後を不安に思う方が多いのは当然です。
しかし、具体的にどのように解決に向けて取り組んでいくべきなのか、状況は人それぞれですから、すぐに解決策を見つけ出すのは難しいかもしれません。
そこで今回は、おひとりさまの終活や生前整理について、事前に考えるポイントをまとめました。
ご自身にとって最適な計画を立てるための一助となれば幸いです。
終活について
終活とは、自分がこの世を去った場合のことを考えて、家族や後を引き継ぐ人たちが困ったり苦労したりすることのないように、計画を立て準備することで、2009年ごろ週刊誌の連載記事で「終活」という言葉が生まれたようです。
終活の内容として、葬儀やお墓の準備をしたり、遺言書を作ったり、財産の管理方法を考えたりするといったイメージを持たれている方も多いのではないでしょうか。
少子高齢社会で核家族化が進む現代では、お墓を受け継ぐといった慣習が継続できないケースも少なくないため、新たな選択肢を考える機会として高齢者を中心に話題となってきました。
おひとりさまの終活とは
「おひとりさま」の終活の方針は「自分自身の万が一に備える」のが最重要課題です。
そもそも「おひとりさま」とは、現在一緒に暮らす配偶者やパートナーがいない、あるいは子供や兄弟がいないといった一人暮らしの方をいい、「おひとりさま」と表現する書籍やウェブサイトは増加している印象です。
万が一の時のサポートを家族ではなく他人に委ねなければならない人が「おひとりさま」にあたると考えて良いでしょう。
こうした方は、心身の衰えから生じる実生活上の困りごとや不安を解決するために終活を行えば、多くのメリットを享受できます。
おひとりさま終活のメリット
おひとりさま終活は、事前に備えておくことで安心した余生を過ごせるという大きなメリットがあります。
たとえば、過去15年間で2倍以上に増加している孤独死は、遺品や住宅についての問題を発生させてしまいます。
遺体の引き取り先や葬儀についても事前の取り決めが行われていないために、家主の方へ負担を強いることになるケースも少なくありません。
こうした時、病気やケガをされた場合の身元保証人や同意人、死後事務の手続きを委任するといったことを生前にしっかり決めておくことで、自分の亡き後にも自分の意思を反映できるようにと、取り組む方が多いように感じます。
言葉のイメージが先行しがちですが、実際に取り組まれている方にお会いすると前向きで、むしろ楽しんで決められている方が多いように感じます。皆さんの取り組み方を拝見していると、最期に頼れるのは自分自身だとお考えの方が多く、責任感を持って取り組まれているのが印象的です。
実際に取り組む内容についてざっと確認されたい方は、以下の記事でくわしく解説を行っておりますので、ぜひご覧ください。
おひとりさま終活を始めるのに役立つ2つのポイント
おひとりさま終活を成功させるためには、まずご自身の財産について把握されることをオススメします。
現実に、終活を行う上で今後の全体的な年金額や貯蓄額などを把握しながら、保険の内容を精査するなどして全体像を捉えるのはとても有益です。場合によってはFPさんに相談するといったことも役立つかもしれません。
とくに、今すぐに始められるのが「クレジットカードの解約や見直し」です。
なぜなら、契約内容や引き落としの内容を可視化するのにとても良いきっかけになるからです。
たとえば、使っていないクレジットカードが何枚もあったりするようなケースでは、引落先から存在を忘れていた銀行口座を把握できたり、年会費の節約やクレジットカード引き落としとなっているサービスを見つけ出して必要性を再検討できることでしょう。
おひとりさま終活と終活ノート(エンディングノート)
クレジットカードの解約など、財産の把握を始めたら、その情報をメモしておくと安心です。
こうした時に使えるのがエンディングノート(終活ノート)です。
エンディングノートは、自分に万が一の出来事があった場合を想定して、ご自身に関するあらゆる情報を書き込みます。
- 基本的な個人情報
- 遺言書の有無(エンディングノートと遺言書は法的に大きな違いがあります)
- 預貯金
- 保有している株や投資信託などの情報
- 不動産
- 高額な美術品やゴルフ会員権など、上記に当てはまらない資産
- 人に貸しているお金
- 生命保険
- パソコンや携帯電話のパスワード
- 利用しているインターネットサービスやサブスクリプション契約
- ローン
- 葬儀の希望はどのようなものか
- 埋葬の希望
- 親戚、友人、知人の連絡先一覧を表にしておく
- 医療や介護についての意思
- ペットについて
以下のページをご覧いただければ、しっかりとしたエンディングノートを無料で作成できるはずです。
ぜひ挑戦してみてください。
また、ネット通販や本屋さん、あるいはホームセンターなどでフォーマット形式になっているエンディングノートを数百円程度で入手できます。
私たちも、エンディングノートの存在により、実際の整理の作業などでとても役立った経験がございます。
情報が集約され残されているわけですから、いざという時にしっかりと情報を共有できます。
おひとりさまの終活におけるお部屋のお片付け
お部屋のお片付けも終活における重要な役割のひとつです。
洋服や靴といったものや、本・雑誌、趣味のものなど、家に存在するあらゆるものの要不要を判断し、必要ないなと思うものは、これを機会に手放してみるのも良いかもしれません。
「断捨離」という言葉がありますが、自宅のものを減らして整頓することは生活の水準を上げ、心に余裕をもたらします。
玄関やお部屋の一部分など簡単なところから始めてみてはいかがでしょうか。
しかしながら、ご自身だけで解決するのが難しい場合もあることでしょう。
私たちへご依頼いただくケースでは、自宅にまだ捨てていないゴミの入った袋がたくさん残されていたり、片付いていなかったりすると、人に見せられず恥ずかしいといった理由でご相談いただくことも少なくありません。
ひとりでお困りの場合には、ぜひ一度お声掛けください。無料でご相談いただけます。
友人の存在は、おひとりさまの終活にとって重要な意味を持ちます。
信頼できる友人の有無はおひとりさまの終活にとって、とても重要な意味を持ちます。
なぜなら、有事の際に気兼ねなく相談したり支え合ったりする関係を構築しておけるからです。
実際に、おひとりさま終活を楽しんでおられる方は、義務教育を共に過ごした友人と長らく地域で関係を維持している方も少なくありませんでした。ハツラツとされ、とても充実した毎日を送られているように感じます。
決して無理をする必要はありませんが、友人を増やすためには、各種のクラブやサークルなどに参加して活動したり、積極的に関わろうとしたりする姿勢が大切ではないかと感じます。
参考:神奈川県「老人クラブのご案内」・「横浜市老人クラブ連合会」など
ご自身のお小遣いのためにアルバイトや仕事を行うことで、気兼ねなくご自身のことを話す相手や意気投合できる相手がいることで、やる気や意欲が湧いてくるかもしれません。
おひとりさまの老後を考え、日頃の生活から備える
おひとりさまの就活では老後についてしっかりと考えておくのがオススメです。
なぜなら、心身ともに十分元気な時でないとより良い判断を行うのは難しいからです。
いざ病気になって考え出すと、消極的な答えを選んでしまうとか、退院期限に追われてよく考えないまま言いなりになって自分の終のすみかを決めることになりかねません。
おひとりさまの老後の医療はかかりつけ医師を作って健康リスクに備える
健康のリスクに備えるためには、かかりつけのお医者さんと薬局を作っておくと良いでしょう。
かかりつけのお医者さんと薬局を作っておくことで、ご自身の健康状態を把握してくれますし、持病をお持ちの場合には飲み合わせや食事のアドバイスを受けられます。
また、入院するときのことを考えて、着替えや自宅の鍵など事前に入院する際に必要なものをバッグへまとめておくとか、医療費に関する保険を見直したり支払条件を確認したりしておくのも大切なポイントです。
また、おひとりさまの終活では、身元保証人や死後事務への委託先も検討しておくのが重要です。後述します。
住居について
賃貸で住み続けられるのか、バリアフリー対応は大丈夫なのかは最低限確認しておきましょう。
いくら健脚な方でも、階段しかない団地の3階や2階建ての住宅にずっと住んでおくのは難しくなる可能性があります。
少し出かけるだけでも億劫になってしまっては、活動的な毎日を送れないばかりか、病院や用事に外出するのも不便で、億劫になってしまうことでしょう。
そのため、不便さを感じる前に現在の住宅のリスクを判定して住み替えを検討しておくことが重要です。
自分が老いた後のことだけを考えるだけではありません。
たとえば築30年などの一軒家(持ち家)といった場合、空き家になることがわかっている状態で維持するのは得策ではありません。しっかりと熟考して判断できるうちに、自分が暮らしたいと思う物件への転居を考えてみるのが大切です。
老人ホームへの入居
必要に応じて老人ホームへの入居をお考えの場合には、事前に情報をしっかりと把握してから判断する必要があるため、早めに取り組むのが肝心です。とくに、契約時には契約内容と料金の支払いについてしっかりと理解する必要があるため、健康的に判断できるうちに探しておくことが重要です。
最近は施設によって、さまざま趣向を凝らし、特長が異なるケースも多いようです。
お困りの方がいらっしゃいましたら、私たちにご依頼いただくことで、あなたに最適な老人ホームを無料でご紹介できます。
トラブルを避けるために遺言書を書く
遺言を書いておくとご自身の意思を自分の死後もしっかりと表明できます。
とくに、自筆証書遺言補完制度を利用して、ご自身で法務局へ通えば遺言書を保管してもらえ開封時の検認も必要ありません。
そのほか、公証人や司法書士に依頼することで、公正証書遺言として残すこともできます。事前に必要な情報や書類が多数存在するため、まずは士業の方に相談したり公証役場にご相談になったりすると良いでしょう。
おひとりさま終活で考慮が必要な財産管理や死後事務手続きの代行について
おひとりさま終活の場合には、ご自身の死後の財産管理や手続きを弁護士などの士業の方に任せる場合もあることでしょう。
最後に、これらの制度について簡単にご紹介します。
実際にご利用になる場合には、弁護士さんや司法書士・行政書士といった専門家に相談しましょう。
気があってなんでも相談できる信頼できる士業の方を探すのはとても難しい作業です。
時間をかけ、できる限り多くの士業の方とお話をして、信頼できる方を見つけるのが大切です。
財産管理等委任契約
しっかりとご自身で意思表示できる段階から管理を専門家に任せるときに利用を検討したいのが「財産管理委任契約」です。
高齢となったのちに病気やケガで誰かの助けが必要な場合に、あらかじめ必要な手続きを委任する人を決めておく契約です。
この契約方法は、契約が正しく実行されたかどうかを監督する公的な機関がありません。さらに、本人(委任者)が契約した内容を委託側(受任者)が取り消すことができません。この点が法定後見制度と大きく異なります。
そのため、的確な判断ができない状況で本人が契約した内容を取り消せないなどのデメリットがあります。
任意後見契約
任意後見契約とは、委任契約の一種で、委任者(以下「本人」ともいいます。)が、受任者に対し、将来認知症などで自分の判断能力が低下した場合に、自分の後見人になってもらうことを委任する契約です。
成人であれば信頼できる人を後見人にできます(破産者や本人と訴訟をした人など、適しないと判断される方を除く)。
ただし、任意後見契約を締結するには、法律により公正証書にて行わなければなりません。
おひとりさまの終活のケースでは、弁護士や司法書士、社会福祉士やその法人に後見人になってもらう場合が多いでしょう。
自分が老いて判断能力が衰えてきた場合等に収入や支払いの管理財産の管理や医療・介護に関する契約、役所での手続きなどを自分でするのが難しくなったとき、代理人となって手続きをおこなっていただけます。
使い込み等のリスクを減らすため、任意後見人の業務を監督する者として、家庭裁判所が任意後見監督人を選任します。
任意後見人の業務は、この家庭裁判所による任意後見監督人を選任後に行われるため、監督下によって仕事が行われます。
もしも任意後見人に不正な行為などが発覚した場合には、解任できる仕組みです。
任意後見契約の反対に、すでに自分自身で判断が難しくなっているような状況においては、法定後見制度によって家庭裁判所による後見人の選出です。
くわしくは日本公証人連合会「2 任意後見契約」をご覧ください。
死後事務委任契約
自分自身が亡くなったあと、葬儀を始めとして、死亡時の病院への駆けつけ・遺体引取から、葬儀、お墓、遺品整理、役所の手続きや各種契約の解約、費用の清算など死亡後に必要なさまざまな手続きが必要で、この作業の代行をお願いする人を決めておくのが死後事務委任契約です。
亡くなった後、一部の財産管理や、役所への届け出から葬儀埋葬、デジタル遺品(SNSアカウントなど)など、数多くの事柄について、亡くなった後にすべき事と依頼したい人を決めて公正証書で契約を結びます。
を家族に代わっておこないます。
遺言執行者との間で死後の事務委任契約を結んでおけば、遺言状に記載されている内容を実行を担保できるというメリットもあります。
銀行が行うおひとりさまの信託も存在しており、お付き合いのある方はすでに契約などをされているかもしれません。
今一度担当の方に確認をしてみるのも良いかもしれません。
まとめ
今回はおひとりさまの終活について、一般的な要点をまとめてご紹介しました。
一人暮らしの今後を不安に思う方が多いのは当然のことですが、自分はどうしたいのか、という考えを巡らせ、その要望をひとつずつ検討していく時間は自分と向き合える非常に有意義な時間のはず。
スタートしてみると、自分の今後には大きな展望や可能性があることを知る時間となるかもしれません。
後々になって「こうしておけばよかった」とか、ギリギリになって準備不足を嘆くことのないように、しっかりと生前から取り組んでおくのは重要な考え方かもしれません。
なかなか計画通りに行くことは少ないかもしれませんが、それだけに少しずつでも考え始めてみることが重要なのかもしれません。そして、それは意外と楽しい時間になるかもしれません。
この記事がおひとりさまの終活にお悩みの方への一助となれば幸いです。
最後までお読みくださいまして、ありがとうございました。